イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

カワの流れのように

2012-03-12 00:27:06 | 日記・エッセイ・コラム

ひさびさに販売応援に借り出されると、宛名と電話番号で埋まった膨大な注文伝票を相手にすることになり、かつて営業職サラリーマンで名刺交換と電話かけの毎日だった頃を思い出すとともに、さても「人の名前とはヤッカイなものだな」との感を深めます。

顧客・注文主の名前の記入違い、記憶違い、伝達違いは、普通に先方に失礼で信頼をそこなうばかりでなく、時として大きな販売ミスや事故につながることもある。お客さんの身になってみるとわかります。月河の本名も以前ここで書いたように、きわめて“誤字率”の高い漢字を含んでいるため他人事ではない。訊かれたから名乗ったのに、その名前が誤字や当て字で伝票に書かれていると、なんだかえらく杜撰に扱われた気になり、商品は注文通りであっても、代金を支払う意欲が大幅に減退します。前払いだと、かなり本気で「金返せ」と怒鳴り込みたくなる(怒鳴り込みませんが)。

よって短期間、しかもほぼ手弁当のタダ働き(ときどき飲み会付き)と言えども、販売に携わるときは、最悪、注文主のフルネームだけは正確に聴き取り書き取るべく、“心がけより命がけ”の勢いで対応しているわけですが、間違えまい、正確であらんと真剣になればなるほど、「どうにかならんか」と思うことがあります。

たとえば“川井”さんと“河井”さん。どっちかに統一してもらえませんかね。フルネームをお尋ねして「カワイ・○○です」と返ってくると、「どちらのカワか」を追加質問せざるを得ない。稀に、お客さん本人が「カワイのカワはサンズイの河です」、あるいは「サンボン(=タテ3本)ガワのほうです」、もっと親切なかただと稀に「サンズイの河に井戸のイです」などと付け加えてくれることもありますけど。「3本ガワに居留守のイ(=川居)です」と、聞いただけで「長年、間違えられ慣れてる」感じの、筋金入りの“カワイ界の少数派”らしいそつのないご説明も聞いたことがあり。名乗るほうも、聴き取るほうも気を遣いまくりなこういうまぎらわしい同音異名は、なるべく早急に統合簡素化すべきではないでしょうか。

“サワダ”さんも、“沢田”一本でたくさんでしょう。“澤田”なんて気取るこたぁないでしょうが。画数多けりゃなんか重みとかカンロクが出るとでも。いまどき、“澤”田にこだわってるのは、国防婦人會かスパイダーオルフェノクぐらいなもんでしょうに。『カーネーション』と、『仮面ライダー555(ファイズ)の見過ぎか。“ハマダ”さんも、全員“浜田”でよし。“濱田”さんじゃ、気安く「ハマちゃん」と呼びづらいし。

“渡辺”さん“渡邊”さん“渡部”さんも、そろそろ大同団結すべき時です。筆記試験や公的書類作成の際、無用に多い画数のため人に後れをとりがちだった“渡邊”さん、長らくご苦労様でした。「“ワタナベ”なのか“ワタベ”なのか」というもうひとつの難題を背負って生きてきた“渡部”さんもやっと自由になれます。

“田中”さんと“中田”さんも、どっちか折れていただけるとありがたい。意味するところ同じでしょうよ。実質。日本で一番有名で有力な“田中”さんと言えば故・田中角栄さんのジュニア…じゃなく娘の田中眞紀子さんで、同じく“中田”さんはサッカーの元・日本代表中田英寿さんでしょうから、この2人さえ説きつければコッチのものだ(ドッチのものだ)と思うんですが。甘いか、読みが。「ナカタじゃないぞナカ“ダ”だぞ!」と、元・横浜市長から抗議が来るか。

同様に、“竹内”さんと“竹中”さんも意味がかぶっています。悪いことは言いませんからまとめましょう。“内”にまとめるか“中”にするかとなれば、「福は内、鬼は外」と言う長い伝統がある分“内”が有利ですが(?)、“中”派の納得が得られない場合、いっそ揃って“竹外”さんになってしまうというのも手です。もう“内”や“中”にこもっている時代ではない。広い世界に出てみようではありませんか。

その勢いでさらに視野を広げると、“西山”さんと“東山”さんも、歩み寄る時期は近づいています。狭い日本、東だ西だと区分けして何になるというのでしょう。“東”日本大震災からの復興も、“西”の力が合わさってはじめて成ろうというものです。ベルリンの壁崩壊、“東”“西”ドイツ統一からもすでに四半世紀が経過しようとしている今日、日本の名前界も躊躇してはなりません。“東”山と“西”山の間をとって“中央山”さんになってはどうでしょう。ネイティヴ“中山”さんから反発が出た場合、東はEast西はWestですから共通部分を活かし“st山”さんもいいかもしれません。「こんな間抜けな名字の男と結婚したつもりはない」と木村佳乃さんが離婚訴訟を起こすかもしれませんが(起こさないと思いますが)静観の方向で。

……その他、“斉藤”さんと“斎藤”さんと“齋藤”さんの問題、“畑山”さんと“畠山”さんの問題、“ヤマザキ”さんと“ヤマサキ”さんの問題など、乗り越えるべき難題は尽きません。たかが名前、されど名前。1コの名前には必ず人格も1コついていますからね。

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