イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

えころじいすと

2009-02-09 21:33:55 | 本と雑誌

最終GP放送前日にどうにか入手した『炎神戦隊ゴーオンジャーキャラクターブックLet’s GOON!!!!!!!(←“!”が7ヶ。もちろんメンバーの人数にこだわったんでしょうな)』(定価税込2,200円、東京ニュース通信社)を深夜読みふけって寝そびれてしまいました。

…しかし、日本全国でいちばん不況の淵の、そのまたどん底深度に落ちぶれ倒していると思しき当地の、商業施設閉鎖・廃業・休業・良くて縮小移転ラッシュはすさまじいものがあります。2ヶ月3ヶ月先の発行予定の本の予約などうっかりできない勢いになってきました。

ネット通販の至便性は理解しつつも、なるべく近隣の古くからある本屋さん、レコード屋さんがこの先も存続できるよう買い支えたいなと思っていたのですが、悲しいかなそんな悠長なことも言ってられなくなってきたかも。ちょっと脱線。

この本は2,200円分のモトをとるためにもとことん熟読するつもりなので今後もちょくちょく文中言及すると思いますが、いちばん興味深かったのが巻の後半深いところに収録されているP三人衆匿名…ではない座談会(匿名にしたら『噂の眞相』になってしまいますね)。特に、主要キャスト選びの話は興趣尽きないものがありました。

イエローの逢沢りなさんは全P一致で「一目惚れ」。

とにかく「オーディションに来た子の中で、いちばん可愛かった」(郷田龍一P)。プロフィール真っ白(=過去の出演経験がない)で、とりあえずマネージャーさんに連れて来られましたみたいな感じだったけれど、理屈抜き可愛い、性格もいい、抜群の存在感で、演技力なんたらもいっさいぶっ飛ばす勢いだった様子。いち視聴者として見ていると、序盤は当然メンバー中いちばん素人っぽかったのですが、確かに“性格のよさと現場での好感受け容れられ度でお釣りが来てる”とひしひし伝わってきてました。こういう新人さんは週刻みで上達するなと思ったら、果たせるかな週ごとどころか、1話の中でもわかるくらいみるみるこなれてきた。

シルバーの杉本有美さんは、すでにグラビアで大人気で、オファー出演依頼してもいいくらいの認知度があったそうですが、書類選考に来た中にさらっと名前があって「おおっ、山の中に(宝が)入ってた!」(和佐野健一P)と嬉しい驚きだったそう。動いている絵を見たことが無くそこが不安かなと思ったら、ちょうど直前に舞台に出演中で、演技もいけることが確かめられたとのこと。

こういう話を聞くと、役者さんと作品との出会いは本当に縁(えにし)の糸だなという気がする。カッコいい、かわいいニューカマー毎年カモンなヒーロー番組を手がけるPさんなら、巷にあふれるグラビア・グラフ・ポスターの類は年中チェックしていて、「このコいいな」と脳内パドックに入れている顔、名前はひとりふたりではないはず。なのに声をかける前に“山の中に入ってた”ということは、要するに『ゴーオンジャー』という作品が、パドック周回中の他の顔ではなく、杉本さんをピンポイントで選んで呼び寄せたのです。「ここだよ、ここに来れば輝けるよ!」

 ボーイズ諸君の選考秘話も納得を通り越して、ほとんど抱腹もの。グリーンの碓井将大さんは「いちばん(イメージしていたグリーンの)役とシンクロしていた」「(演技)経験はないんだけど感覚だけでセリフを読むと、その感覚がズバ抜けていた」(和佐野P)グリーンの、というより炎神バルカのキャラともシンクロしてルデンテ(苦)。

…ただ、イエローの逢沢さんと、碓井さんと、メンバー中2人が実年齢16歳ということになり、“車を運転する”というゴーオンジャーの設定上リアリティがなくなるのでは、との心配はあったそうですが、案じめさるな。後から自薦で加わった2人のもう1人、ブラックの海老澤健次さんが「いちばんの予想外(笑)」(和佐野P)のキャラ立ちで、きっちりグリーンと描き分けられて大成功。

P さんたちが愛をこめて“エビちゃん”と呼ぶ海老澤さんはオーディションの途中までは、ふにゃっとした感じとか癒し可笑しい系の笑顔が前面に出て、「コイツは(ハードボイルドキャラの)ブラックだけはないな」(日笠淳P)と思われていたのが、3次オーディションぐらいまで行ったとき、「彼がコワモテを演じるときの、滲み出てくる変な感じが、急に“うわっ、面白い!”と思えちゃった瞬間があって、以降それ以外見えなくなった」(同)「ボクは全然印象がなくて、最終選考でも“(セリフを)もっと渋く、低音で”とやらせてみたんだけどなかなかうまくいかなくて」(郷田P)「でもその、一生懸命ニヒルを演じても隙があるのが、いま思えば今の軍平の魅力の原点になっている」(和佐野P)。

観た側から言うと、海老澤さんも役者としてフレッシュないい味を出していたし軍平も立っていたことは確かですが、もっと言えば“元・警官”かつ“刑事熱望の交番勤務おまわりさん”という設定があっぱれクリーンヒットだったと思う。海老澤さんが軍平役に決まってから練り足された設定なのか、あらかじめだったのかはわかりませんが、“正義のヒーロー志願”「カッコよすぎる…!」(←結構見てくれに食いつく)と、“交番のおまわりさん”との取り合わせが、日笠Pの言う“滲み出てくる変な感じ”とこの上なくナイスマッチだったんですな。杉本有美さんが“『ゴーオン』という作品に呼ばれた”としたら、海老澤さんはそれこそゴーオン次元に波動レベルで存在していた“石原軍平”に呼ばれて、実体を与えたと言っていい。

ブルーの片岡信和さんは「断トツでさわやか」(郷田P)「(オーディションのとき)黙って控室にいた中では目立ってかっこよくて、そこでまず注目。芝居をやらせたらふわっと優しい感じが、今年のブルーにうまくはまった」(日笠P)「いい意味で生真面目。“(セリフを)あと偏差値10ぐらい下げてやってみて”って言ってもなかなかできない。何回やっても、博識で、みんなを一歩引いて見てる感じが出てしまう」「古原(靖久さん)が走輔だとしたら、もう片岡は連、という感じだった」(和佐野P)。

かつては“クール理知的”の代名詞だった戦隊ブルーが“ふわっとして優しい”だけでもかなり解釈咀嚼がむずかしいのに、“世話好きオカン”という属性を加えられて、たぶん7人の中ではいちばん難役だったのではないでしょうか。これも片岡さんがブルーに決まってから出来た設定かどうかわからないのですが、この難関をほとんど“生真面目”だけで貫ききったのが、片岡さん自身もスタッフさんも偉いし度胸がある。

家族の中における“オカン”とはどういう役割どういうポジションだからして、演技としてはこれこれこういう…みたいな、いやが上にもコムズカシくする逆算分析をいっさいスルーして、“作った料理が美味しく安心して食べられそう”という清潔感、几帳面さをとことん前に出した。他のメンバー(キビしく言えばガールズも含めて)のプライベート料理姿、出来上がりっぷりを想像すればわかる。

月河個人的には、オカンキャラがらみのエピより、ガイアクアを浴びて“期間限定ワル”化し、走輔と「コウサカさん」「走の字」と呼び合っていた回の連が好きです。一度ワル化ヴァージョンを見せてくれたことで、地の連の魅力が鮮明になった。俳優としての片岡さんは、今度は思いっきり根性捩じくれた意地悪役、いじめ役とか、病的に嫉妬深い役なんかで見てみたい。連のような難役でもこれだけ演れるのだから、もっともっと引き出しのある人のはず。

メンバー中別格の俳優キャリアを持ち、唯一オファーキャスティングだったゴールド徳山秀典さんは、イエロー逢沢さんとは別の意味でP一同ラブだったようですね。和佐野Pが『仮面ライダーカブト』ですでに付き合いがあり、大翔のキャラが『カブト』の矢車さんと近いため、「(徳山くんが)同じような役しかできないと思われてしまうのではないか」と逆に申し訳ない気持ちもあったものの、そうした不安を払拭して余りある魅力が彼にはあると判断したそうです。「本当に人格者。性格が良くて顔もいい、歌も作れる」(和佐野P)「芝居ができる、ボクシングもできる。こんなヤツいないよ。生まれ変わったら徳山になりたい(笑)」(日笠P)。いや生まれ変わらないでください。徳山さんはひとりだからいいので(笑)(←マネしてつけてみた)。

観ていた印象では、大翔はやさぐれ兄貴矢車さんとかぶるところは、外枠設定としても内面性としても、そんなにないと思うのですがね。逆に言えばかぶらないように“須塔大翔”を造形した、そこに徳山さんのセンスと力量を見るべきなのかも。

そしてお待たせしました、我らがレッド古原靖久さんは「彼との出会いが『ゴーオンジャー』の準備段階の中で最大の発見」「オーディションではいきすぎた元気とか、周りの空気読めてません!的なところが“どうなってるんだコイツは!?”と思ったけど、そういう、本来なら欠点と思われるところがすべて、いまの走輔の魅力になってる」(和佐野P)「“大丈夫か!?”と思ったところが、ぜんぶ大丈夫だった(笑)」「レッド以外はありえない人」(日笠P)と、ほとんど“古原がいたからこそ『ゴーオン』は成った”と言うに等しい絶賛を浴びてますよ。

“レッド以外ありえない人”とは言い得て妙じゃないですか。月河も古原さんのレッドは、平成戦隊レッドの、と言うより、もっと厳密に言えば21世紀レッドのひとつの頂点をきわめたと言っていいと思う。“熱血”“正義一直線”“リーダーシップ”という伝統的レッドキャラに、“ツッコみどころ満載”という、視聴者側の味読の方法論が加わったからこそ、ゴーオンレッドも企画され得て、誕生し得たし、古原さんが起用され得た。強くてカッコよくてリスペクタブルなレッドに“ツッコむ”という楽しみ方が、前世紀には未発見か、少なくとも未定着だったのです。

21世紀の“ヒーローのカッコよさ”には、“ツッコみどころ”が必須で、逆に“ツッコみ拒絶”は、“ダサい”“愛されない”に直結してしまう。

他と比べて高所にある頂点と言うより、“唯一無二”と言ったほうがいいかもしれない。“ツッコみカモン世代”代表のレッドとしては、今後どんなレッドが現われても、ゴーオンレッドのマネっこに見えてしまうでしょう。それくらい古原レッドはオリジナルだった。

彼の場合は、作品が呼んだキャラが呼んだではなく、2008年=平成20年という時代が、ゴーオンレッドと俳優・古原靖久を、サーキット『ゴーオンジャー』に連れてきて引き会わせたと言うべき。

“時代”と言えばつくづく奇縁だなぁと思うのは、ゴーオンジャーの年2008年が、リアルヒューマンワールドでは世界的に、かつ劇的に“新車販売台数が落ち込んだ”年だったということですね。前述のPトリオ鼎談の冒頭にも、「戦隊シリーズにおける2大ヒット要素は“動物”と“クルマ”」との記述があり、『ゴーオン』はまさに両ツボ押さえた作品だったのですが、大人たちのほうが財政的な問題だけか、他に興味が移ったせいもあるのか、とにかく“クルマ”にあまり食いつかなくなってしまった。

でも子供たちは依然“クルマ”が大好きなんですね。しかも話ができ、コミュニケーションが取れ、「相棒」「バディ」と呼んでくれて友達のように交流してくれたら、もう夢中ですよ。

なんとなく、いまは不本意にも沈滞をきわめる自動車産業の、浮上の手がかりと未来図をも描き出してくれた『ゴーオン』…なんつったら話がサンギョーカクメイですな。

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