もう1月も後半戦、通常国会も開会したし(関係ないか)、“新”春でもなんでもなくなってますが、まぁ旧正月(25日)ってのも残っているし、行きがかり上NHK『新春テレビ放談』(2日放送)の話を続けます。
話のスタート台に持ってきた視聴者アンケート調査のタイトルが『2019年の人気番組ランキング』ではなく『~人気“映像コンテンツ”ランキング』に変わったことが端的に示しているように、今年のこのテレビ放談は、“テレビ”放談というタイトルを冠されてはいるけれど、放送時間の半分くらいは“テレビ放送されていない、テレビと別フィールドで広まり視聴されたタイトル”について、パネリストもMCもしゃべっていたような気が。
「2019年、何を見て面白かったか」を語ってもらおうとすれば、Pや局アナなど現役テレビ業界人、“テレビでやってることを論評しておカネをもらうプロ”の皆さんも、いまやテレビ以外の有料配信サービス、youtube(ユーチューブ)動画をはずして語れなくなっている。もうそういう時代に、否応なく、なっているということです。
ランキングとしてはベスト20の17位にUSドラマ『ウォーキング・デッド』が入っていただけですから、“ネット配信専門コンテンツにテレビが押されている”という現況では未だないのですが、テレビを生業とする人たちがこれら“テレビ以外”のコンテンツを語らなければならないについては、数字以上の理由がある。
と言うのは、テレビ関係者全員、言葉は同じではないけれども現在のテレビ番組界の直面する問題として挙げるのが“世代の分断”と“高齢化”。
世代・年代によって見ている番組、ウケる番組がくっきりきっぱり分かれていてほとんど接点がない、別の世界に等しい、ということがひとつ。
そして、どの番組もどの局もどの時間帯も、見ている人がそっくり加齢し高齢化しているということ、言葉を変えれば、いいトシになった人しか見ていない、ということがひとつ。
これを端的に表現するひとつの指標が、youtubeの年代別利用率で、番組内で紹介された調査結果では、10代~40代では81~90%台あるのに、50代では73%に下がり、60代では40%とさらに急落しています。
決して「若者しか利用しない」というわけではなく、たとえば手芸品自作の参考にしたり、防災訓練のやり方を見学したりと、テーマにそって検索して見られる“動画”ならではのわかりやすさを実生活に役立てている中高年の声も紹介されていましたが、“50代から目に見えて減り60代で半分を切る”というデータを見せられると、まさにその年代にいる月河には「やっぱりね」と腑に落ちるふしがあります。
一言で言うと、この世代は、人生にネット汁(じる)がしみ込んでいません。月河家にひかり電話とインターネットが開通したのは2006年=平成18年でしたが、自宅専用としては決して早い方ではないけれども、驚かれるほど遅かったわけでもない。ネットがおしゃれで進んだ会社のオフィス専用ではなく、インテリカタカナ職業の皆さん専用でもなく、一般人の寝起きするお茶の間に入って来たのは、ざっくり言えば世紀の替わり目より前ではないでしょう。
いま40代の人たちは、この時期に20代です。大学生か新社会人か、あるいは仕事に慣れてプライベートの幸福度アップ=結婚、婚活、あるいはキャリアアップや転職を意識していたかもしれない。
いま30代の人たちは中高校生。部活にうちこみ受験を心配しながら、クラスの意中の異性にどうアプローチするかこっそりワクワク考えたりもしていたでしょう。新しいものに興味津々、学びたい習得したい、先んじて使ってみたい意欲満々です。
いっぽう50代以上の、youtubeとあまり親しくない年代の人たちは、この時期に、大袈裟に言うと青春がすでに終わっていました。この年代で初めて向き合うネットとは、面白い興味深いより先に「仕事上“使えないと困る”と、人から最近言われるようになった、よくわけのわからないもの」であり、「無けりゃ無いでどうにかなるし、現に、無しでずっとやってきてた」ものです。
新しく出現した物や人やシステムに初めて接触したとき、“年齢何歳だったか”“社会人だったか学生だったか”“思春期後だったか前だったか”は重要です。いま50代以上の人は、ネットが生活圏内に来たときすでにおじさん、おばさんでした。
そして、この年代は“生まれたときからウチにテレビがあった”“物心ついたらカラーテレビだった”最初の世代で、テレビが娯楽の王道、夢と華の玉手箱だった時代をいちばん長く知る世代でもある。40代以下が“ネット汁”、就中20代以下が“スマホ汁”としたら、“テレビ汁”がいちばん感性知性、生活態度にしみ込んでいるのは、50代以上なのです。
『テレビ放談』パネリストの一人で(かつ、いちばんクチカズが多かった)テレビ東京P佐久間宣行さんが「(youtube利用率が急落する)60代以上が、テレビ視聴者のボリュームゾーンなんですよね」と、問題提起とも慨嘆ともつかない指摘をするのはこの件です。
“中高年と若者”という単純な世代分断なら大昔からあった。世代による価値観や趣味興味、嗜好、行動パターンの違いも絶え間なくありました。
いま、“テレビ”を定点にして眺める世代分断は意味合いがだいぶ違います。“青春の傍らにあったもの”がテレビだった世代と、ネット、スマホだった世代。
テレビ番組制作側は、どうにかして後者に見てもらいたくて感性、興味関心の周波数を後者に合わせるべく、ネットで意識調査などして番組を作るのですが、テレビのスイッチに親しいのは前者が圧倒的ですから、後者に合わせた周波数にはさっぱり乗ってくれません。
『テレビ放談』でも指摘された「ドラマの人気上位がここ10年かそれ以上変わっていない(依然『ドクターX』『相棒』)」「バラエティの新番組が定着しない」等のテレビの苦境の原因はここにあります。来てほしい客と、現に来ている客とで、見えている風景、住んでいる世界、吸っている空気の質が違う。
『テレビ放談』では、昨年一年間でヒットした番組の実例として『あなたの番です』(日本テレビ)の手法にかなりな時間を割いて紹介していましたが、番組の成否・勝敗を分けたのは、詰まるところこの世代分断、“青春分断”への対処の巧拙にほかならなかった・・というのが大結論と言っていいかもしれません。この項続く。
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