BSフジで再放送中『愛の天使』の、時代(=本放送1994年)を感じさせるゆったり甘く切ないOP映像は、ざっくり分ければ“顔出し無し型”ですね。
このフジテレビ・東海テレビ放送枠の昼帯ドラマ、OPに“キャストが役の顔で出る型”と、“キャスト顔出し無し型”があります(正確に言えば“ありました”。現在はドラマタイトル→クレジット提供字幕ベースの1~2カットしかなくなりました)。
月河が初めて本放送で第1話から視聴した『女優・杏子』(2001年1月期)は顔出しも顔出し、闇の中をドレスアップして女優オーラ出しつつポージングして歩く杏子さん、一転砂浜でナチュラルメイクで自由にはじける杏子さんと、ほとんど杏子役荻野目慶子さんのプチPVのような仕立て。同年10月期『レッド』も遊井亮子さんが、降り敷く赤い薔薇の花びらの中で覚醒?と一歩間違えば映画『キャリー』かみたいな不思議なスタートから、最終的にはショーウィンドウの街路を笑顔でダッシュする“ヒロインひとり映りPV系”でした。
荻野目慶子さんは04年10月期『愛のソレア』でも主演で、こちらは少女~若年期担当前田綾花さんからバトンを受け継ぎ、OPでも衣裳七変化ならぬ3変化くらいでしたがヒロイン美保の人生の荒波を象徴して見せてくれました。女優さんながらすでに怪優的貫禄も備えている荻野目さんをヒロインに担ぎ出すなら、OPもPVにしないと失礼だろってぐらいの勢いでした。
03年『愛しき者へ』の馬渕英里何(現・英俚可)さん、06年『新・風のロンド』の小沢真珠さん、08年『安宅家の人々』の遠藤久美子さんも、それぞれドラマに合わせた白メインのイメージ衣裳で、ひとり映り大活躍のOPでしたが、この“顔出しヒロイン単独主演系”OPの最高峰には、ぜひ03年『真実一路』の高岡早紀さんを挙げたい。『ソレア』につながる、ヒロイン経年成熟3変化パターンでしたが、放送当時30歳高岡さんの女学生セーラー服姿を拝めましたからね。
並木の成熟ロードを歩むヒロインがOPで一瞬すれ違う前半の、相愛の相手役をつとめた加勢大周さんが、残念ながら周知の不祥事で芸能界事実上追放に等しい状況なので、『ソレア』とともに再放送は難しいかもしれませんが、もし当時デジタル録画が可能だったら、ぜひ永久保存しておきたかったですね。
ヒロインのモーションもカット数も少なめだけれど印象的だった例で言うと、05年『危険な関係』の高橋かおりさん。OP前半、月夜のバラ園で茨の蔓にからまれた部分裸身のカットをいくつも出しておきながら、いざ高橋さんの顔が映ってロングになると、からまれながらしっかり着衣、というズルい女作戦。まぁ、結ばれそうで結ばれないツンデレすれ違いの醍醐味も柱となるお話だったので、これくらいの脱ぐ脱ぐ詐欺(詐欺って)は見逃しましょう。
“顔出し型”にはこういった“ヒロイン単独主演系”以外にも、相手役との純愛あるいは悲恋小芝居系(02年『新・愛の嵐』の藤谷美紀さん要潤さん、05年『契約結婚』の雛形あきこさん長谷川朝晴さん、同年『緋の十字架』の西村和彦さんつぐみさん、06年『紅の紋章』の酒井美紀さん山口馬木也さんなど)、親世代も含めた家族群像系(02年『母の告白』、07年『愛の迷宮』、古くは1993年『誘惑の夏』、1996年『その灯は消さない』など)の変化球もあります。
一方、ヒロイン含め劇中キャストがいっさい顔を出さない、イメージ映像のみの代表と言えば何と言っても04年『牡丹と薔薇』、06年『偽りの花園』、ご存知中島丈博さん脚本による“宿命の女子ふたり”連作。吉屋信子原作の05年『冬の輪舞』もそうでしたが、対照的なキャラのダブルヒロイン作は、映るカット数や秒数に差が出ちゃいけないとかなんとかいろいろうるさいので“顔出し型”は作りにくいのかもしれません(07年『母親失格』は芳本美代子さんと原千晶さんのダブルヒロインでスタートしましたが、OPは第三の主役=娘役森本更紗さんを加えてトリプル仕立ての顔出しになっていました)。いずれも、キャストの顔が見えないことがひとつも物足りなさにつながらない、キャンドルランプやステンドグラスなど光の素材をふんだんに使った、凝りに凝った美麗映像でした。
『冬の輪舞』は舞台に設定された伊豆の素直な海浜風景動画スライドショーで、屋外ロケが少なく箱庭作りモノ感が付きまとう昼帯の世界に広がりを添える効果はありました。
“顔出し無し型”OPにおける変化球の極致は、人影はちらつくけど、ヒロインでも相手役でもないという、07年『金色の翼』のBamboleoダンスでしょう。舞台に想定された離島の遠景近景、ホテル周辺風景に挟まれる男女のダンサーのステップ踏む脚元のみ。ヒロインと相手役(国分佐智子さん高杉瑞穂さん)をイメージしているようで、実はそうでもない。“ひと夏の欲と享楽に踊る人々”の象徴ぐらいに捉えていたほうが適切でしたが、この距離感、抽象感が、ドラマラストまで一抹、ヒロインカップル及び彼らを取り巻く人物たちへの距離感につながってしまったのは如何ともしがたいところでした。良く言えばアレゴリック、寓話的、悪く言えば絵空事感濃厚な作ではありましたね。
さて、そんなこんなで現行堂々再放送中の『愛の天使』OPは、歴然と“顔出し無し”でありながら、実は川べりで水に浸かっていたり、廃品置き場に埋もれかかっていたり、雨の盛り場の片隅に放置されていたりする壁画タイルの破片に描かれている男女の天使像デッサンが、微妙に主役ふたり(野村真美さん渡部篤郎さん)似です。女性像のほうはぱっと見、あからさまに野村さん風ぽってりクチビル、閉まりそうで閉まらない官能系おクチではないのでスルーするかもしれませんが、男性天使のほうは、かなりはっきり、本放送当時の渡部さんのナヨめの横顔を写している。
キャストの代わりに、脚役者さんや後ろ姿役者さんではなく、似顔絵で顔出し共演させるという、これも変化球中の変化球と言えましょう。
過去作の再放送を視聴しつつ「このOPはどっち型の、こんな系だな」と腑分けする楽しみ。気がつけば、確かにこの枠の昼帯、08年の『花衣夢衣』でOP自体が廃止された頃から、月河が面白がれる、興がれるところが徐々に少なくなって行く傾向にはあったなと、若干惜しくもなります。
まあ、帯ドラマの場合、OPは毎日、毎話見る、観られることになるわけだから、飽きられずに視聴意欲を喚起し続ける60秒~90秒の映像を考えて作るのは、手間も費用も頭痛モノなのかもしれない。
枠が違いますが、放送中のNHK朝ドラ『てっぱん』は、同じテーマ曲・同じ振付を一般公募のいろんなチームのダンサーズに踊ってもらって、小節ごと編集しては少しずつ入れ替えてつなぐという手法で、放送開始3週めに入っても新鮮さを保っています。
前番組『ゲゲゲの女房』でも後半何回か大きめのマイナーチェンジや、録画再生でよっく観てやっとわかる級の本当にマイナーなチェンジをちょっこしずつ加えて注目させていました。長丁場の帯、こういう手もありますね。
小さな、細部のチェンジほど、月河の様な録画再生メインの客を「どれどれ?…あ、いまの?…見逃した、もう一度リプレイ」と前がかりにさせる効果もありますし。
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