昼ドラもたまにいつもと違うチャンネルを見ると、作風とは別に、いろんな細かい“慣習”のようなものが違うのが、軽く新鮮です。
ここ3話TBS系『暖流』を録画していますが、OPを改めてじっくり見ると、“暖流”という縦書き行書体の左下に“第3話(全55話)”って出るんですね。フジ系=東海昼ドラも第○話は出るけれど、全×話は出ません。いまでこそここの枠は3ヶ月クールで年4作、概ね全作60~65話見当と勝手知ったるなんとやらになっていますが、知らないと、とにかく展開ジェットコースターでドロドロの作風が売りのトコですから「い、いったいいつ終わりが来るんだ…」と視聴者もあてどないドロドロ感をヒロインたちと共有する効果もある(爆)。
全何話のうちいまどの辺まで進んだところか、始まったばかりか中盤なのか終盤なのか、今日初めてこのドラマを見る人にもOPでわかるわけだから、TBS系のほうが親切なような気もしますが、偶然見たのが全55話の第44話とか、あんまり後半だと、「どうせいまから見ても人間関係とかわからないな」と離れて行くこともあるかも。何となく、合理的なようで軽く低体温な感じが漂うTBS枠ではあります。
さて、フジ系=東海の『麗わしき鬼』で目下人気№1キャラと言えばヒロイン相手役・英矢の異母弟みちるくんですが、男の子にひらがな表記の“みちる”、しかも中性的な容姿、と揃うと、どうしても70年代アイドル城みちるさんを思い出してしまいます。
彼のデビューした73年当時は新・御三家(野口五郎さん西城秀樹さん郷ひろみさん)が男の子アイドル界では追随を許さぬ磐石の人気で、柳の下の泥鰌ってなノリで後を追うようにデビューした同系は事実上まったく歯が立たなかったので、城さんも結局は大成はせず泡沫アイドルで終わってしまいましたが、顔に似合わず声質は以外に骨太。甘いか辛いかで言えば甘い声ではありますが骨太。近年も昭和懐メロ番組などで積極的に顔を出し歌ってくれていますが、同年代の引退組アイドルOB、OGたちに混じると声の衰えの少なさは褒めてあげていいんじゃないでしょうか。
…………こんなことで褒められてもご本人、嬉しくないか。取り下げ。
『イルカにのった少年』。月河はドンピシャ彼らポスト新・御三家アイドルのマーケティング対象だった年代なんですが、クラスメートたちともよく笑っていたけど73年・74年(確かこの曲、73年のかなり押し詰まった時期のリリースなんですね。本格的に話題になったのは年明け、冬休み明けぐらいだった記憶あり)時点のリアル女子中学生から見てさえ、このタイトルセンス、詞曲センスはすでにかなり古かった。
♪誰も知らない/南の海から/イルカにのった しょおねーんーがーーやぁーーぁってーきーたッ! という、じわらーっとリタルダンドして戻る歌い出しなど、「いつのヒーロー主題歌だよ」と思っていました。
でも、社会人になってちょっとマニアな曲目入ったカラオケ店に行くと、コレ、結構、難曲だったことがわかりました。歌い出しとほぼ同じコードから展開するAメロを受けて ♪空と海との隙間から/イルカにのった少年はー とテンション上がった直後、すぐにピークに行かないで、♪あーいの花束胸に抱き と一旦引く音程は、かなり歌い慣れないと引けません。城さん、歌、うまかったんじゃないか。
ここで引いた後 ♪とーおい国からやってくる と、さっきピークに直行しなかった分のお釣り来る勢いで直角に上がる解放感。ここは日本語の「遠い」のつもりで歌っちゃいけません。昨日のシマンテック社テレフォンサポート中国人男性スタッフの「ヨースみていて」じゃありませんが、「トーーイくにから」とカタカナ表記のイメージで歌うべし。そのほうがつき抜け切れます。
ここでつき抜け切れさえすれば続く最恥部分 ♪キミに キミに キミに会うため も怖くありません。妙にバックスイングして逆モーション、みたいな腕の振りもつければ申し分なし。とどめは♪やーぁって くぅううるー(←“ぅうう”は三連符) のほとんど演歌なコブシで。
……サラリーマン時代の飲み会で思いっきり周囲に寒冷前線張りめぐらしながら歌ってたのバレバレですが、そこのアナタね、笑うけど、ホント難しいんだから、かなり。アイドルとして大成功とはいかなかった城みちるさんですが、その主要原因が歌唱力不足でなかったことだけは確かです。
たぶん、当時の芸能界は偉い人がみんな戦前生まれのおっさんですから、小学高学年~中学生の女の子の、異性の好みなんてよくわからなかったんでしょう。新・御三家が受けてるからなんとなくソレ風のやつ探してきて、数撃てばどれか当たるかも、という手探り足探りだったのではないでしょうか。とりあえず“女の子と見紛う中性的な男の子”は郷ひろみさんが先鞭をつけてましたからね。
いまの芸能界なら、新人アーティストをお笑い芸人にイジらせるバラエティ番組もあるし、城さんのようなツッコミどころ満載なタイプは逆にB級っぽさを前面に出せば、デビュー曲ひとつとっても(て言うか他の曲知らないだけだが)実力はあったわけだし、もっともっと人気が出たはずの人ではなかったかと思いますが。
『麗鬼』のみちるくんのヘアアイロンでつけたような顔周りの外巻きウェーヴを見ていると、何となく連想が城さんに行ってしまいました。
このドラマに話を戻すと、ナレーションがいつもの「こうして○子と×夫をめぐる運命の歯車は、再び音を立てて回り出していたのです」式の“いかにもナレーション”ではなく、みちるくんの野太いオネエ言葉で語られるのも魅力なのだと思います。たくまざるユーモアってやつもあるし、作り物作り物した例によっての昼ドラワールドではあるんだけど、なんかふんわか風通しがよくなるんですよね。