★大槻幸雄さん、川崎重工業の2年上の先輩である。
カワサキの名車Z1の開発責任者でもあったし、純国産ガスタ―ビンの開発者でもある。
工学博士の優秀な技術屋さんなのだが、そんな学者さんのようなイメージとは程遠い強烈な個性をお持ちで、極端な言い方をすれば、なかなか近寄りがたい感じの存在なのである。
そんな大槻幸雄さんと、なぜか不思議なご縁でもう50年も何となく繋がって、いろいろお世話になっているのである。
私自身の人生の中でいろんな方とのお付き合いがあるのだが、どちらかと言うと私の方がお世話をした回数は多い方だと思っている。
『貸しの回数>借りの回数』を保つように、意識的に頑張って人の面倒を見るような、
そんな生き方をしてきたつもりなのだが、大槻幸雄さんには全くと言っていいほど『お世話になった借り』ばかりなのである。
★大槻さんとの出会いは、もう50年も前のカワサキのファクトリーのレースチーム時代である。
当時大槻さんは、技術部ではGPレーサーのエンジン設計をやっておられたのだが、そんな関係でファクトリーチームのレース監督などもやっておられたし、レース委員会の委員もされていた。
私は、そのレーシングチームのライダ―のマネージングとレース運営委員会の事務局で、大槻さんとは同じレース仲間としてのお付き合いだった。そんな大槻さんがドイツの大学に留学されることになって、その送別会などもさせていただいたりしたのである。
そんな昔のレース仲間で、そのころから大槻さんは厳しかったし、怖かったが、何となく気が合うようなところがあって、一応は貸し借りのない対等なお付き合い だったのである。
そんな大槻さんとのお付き合いだったが、それ以降は全くと言っていいほどお世話になりっぱなしなのである。
●大槻さんがドイツに留学されていた時、マン島のTTレースで、藤井敏雄君が転倒で亡くなる事故があった。
ライダー管理は私の仕事で、そんな突発的な事故に対応する術すら解らなかったときに、マン島の現地から藤井君の遺体を送りだして頂いたのが大槻幸雄さんで、羽田でそれを受け取ったのが私なのである。
どうしたらいいのか、全く解らなかった事態を、たまたまマン島にレース観戦に行かれていた大槻さんがそれを担当して頂いたりしたのである。
●それから2か月後、大槻さんは帰国されて日本GPのレース監督をされたのだが、鈴鹿のデグナ―カーブで有名なデグナ―が、練習中に転倒してアタマを打ち、入院させたのだが、突如意識がおかしくなってドイツ語しか話さないような事態に陥ってしまうのである。
ドイツ語でカルテを書くお医者さんも、ドイツ語の会話はダメで、その急場を救ってくれたのが、ドイツから留学帰りの大槻さんなのである。この時も私はライダ―の契約担当者で大変だったのだが、大槻さんに大いに援けて頂いたのである。
●そんなことが重なった後、翌年から私は東北地方の代理店営業に異動するのだが、東北6県を巡回して開催する初めての代理店会議の技術説明を大槻さんに担当して頂いたりしたのである。
半年の間に、お世話になることばかりが続いたのだが、何かにつけてその後もいろいろと尻を押して頂いてばかりの会社生活だったのである。
従って大槻さんには私は、『借りだらけ』なのである。
★その後、大槻さんもガスタービンの方に移られて、仕事では関係も無くなってしまって、そんな借りを返す機会も失ってしまったままに、退職後また大槻さんが会長をされているZ1会と言うゴルフコンペで、お世話になることになったのである。
昨年の6月にあったそのZ1会のゴルフの打ちあげ会の席上で、
『今年はZの開発、販売40周年で、秋にアメリカのKMCで浜脇さんなど関係者の集まるReunionがある』そのReunionに日本からも参加するのだが、『古谷君、君も来ないか?』と持ち掛けられたのである。
私は、Zの開発には全く関係していないし、当時のアメリカでの販売にもタッチしていないので、参加する理由はないのだが、ずっとお世話になり通しの大槻さんのお誘いを無下にお断りするのも難しかったのである。
そんなことから、何とかZに関する何かをやろうと、KAWASAKI Z1 FAN CLUB の発想が出てきて、9月のReunionに参加した人たちに入会して貰って、Zファンのお手伝いをしようと言うことになったのである。
それからちょうど1年経って、先週末は、KAWASAKI THE LEGENDS & FUTURE というイベントの開催であった。
そのメインゲストにご招待したのも大槻幸雄さんで、ここでもまたお世話になってしまったのである。
だだ、ちょっとだけ『お返しも出来た』かな? と思うのは、
浜脇洋二さんと、大槻幸雄さんの監修で関係者が執筆をした
『カワサキZの源流と軌跡』 と言う三樹書房発刊の特別愛蔵本などの販売に協力出来たことかなと思っている。
集まった人たちが、5040円もする特別愛蔵本だけでも70冊近くも買ってくれたし、一般本も20冊近くお買い上げ頂いたのである。
★さらに、Zの本と一緒に、
大槻幸雄さんが書かれた 『純国産ガスタービンの開発』と言う著書も当日に紹介販売させて頂いた。
これで、少しは、お世話になったお礼が出来たと、私も1冊買って読んでみたのである。
非常に技術的な中味も濃い著書なのだが、技術的なことはサッパリわからないので、その開発のコンセプトや、開発の流れなどを中心に読ませて頂いたが、
大槻さんらしい書きっぷりで、いっぱい存じ上げている名前が出てくるのである。
そのストーリーもオモシロかったが、吉田俊夫さんとか山田熙明さんなど、私も存じ上げている大槻さんの先輩たちがちゃんとその節々で面倒を見ておられるのである。
『純国産ガスタービン』これが成功したのは大槻さんの執念もあったのだが、それを援けた先輩たち、そんな舞台裏みたいなところが覗けて、非常に感銘を受けたのである。
そんなことはよく知らなかったが、大槻さんも先輩たちの援けを受けながらの『純国産ガスタービンの開発』と言う難事業を成功に導かれたのである。
ただ、ちゃんと信念を持ってものごとに真っ正面から取り組んでいる姿勢があるから、先輩も手を差し伸べてくれるのだと思う。
どちらかと言えば、ちょっと無茶なところもある大槻さんだが、いつもホンネで嘘がないし、そんなところが私も大好きなのである。
Zの本はともかく、『純国産ガスタービンの開発』など並べても売れないのではないかと思ったが、案に相違して、予想以上の売れ行きであった。
50年経って、ようやく大槻さんに一つだけ『借りを返した』そんな感じなのである。
その大槻さんに、今回のイベントのこと、大いにお褒め頂いて非常に嬉しかったのである。
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