世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

映画「奇跡」

2011年06月18日 | Weblog
映画「奇跡」を観てきた。
この作品を知ったのは通勤中。電車内の広告で知った。
監督は是枝裕和氏。「歩いても 歩いても」「誰も知らない」を手掛けた監督だ。

あらすじ: 離婚した両親がやり直し、再び家族4人で暮らす日を夢見ている航一(前田航基)。母親と祖父母と鹿児島で暮らしながら、福岡で父親と暮らす弟・龍之介(前田旺志郎)と連絡を取っては家族を元通りにする方法に頭を悩ませる航一は、九州新幹線全線開通にまつわるうわさを聞きつけ、ある無謀な計画を立て始める。

以下、ネタばれあり。


前半は小学生の生活模様がじっくりと映し出されていた。
ノスタルジーとドキュメント的な作風、それらのバランスが塩梅良くて、さすが是枝監督だと思った。
後半は、九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を目撃すれば、奇跡が起きて、願いが叶う…そんな伝説を信じ、兄と弟、そしてそれぞれの友達が冒険に出る様子が描かれていた。
小さくて大きな冒険に出る少年少女たち。
それぞれの胸に秘めた願いを大切に持ち抱えながら。
すれ違う新幹線の轟音や風に各々の願いを大声で託すところでジーンときてしまった。
帰ってきた少年少女たちは、ひとまわり大きく成長を遂げる。
見終わった後に残るほのかな余韻は、彼らの成長を見届けられる歓びがあってからこそだと思う。

あとこの作品の愛すべきところは、クスッと笑える箇所が多いことだ。
樹木希林の天然のボケ具合は慣れているけれども、小学生ならではの珍回答が愛らしい。
冒頭の教室のシーン。
教師が、ある生徒に向かって「エグザイルになりたいですって何だ?先生は将来なりたい職業を書けと言ったんだ。エグザイルは職業か?」と怒る。ここで一発目、吹いた。他にも「昆虫」と書く生徒もいた。小学生の発想って凄い。

大人だけではない。
子どもに「仕分け」の意味を聞かれ、「無駄なことをなくすことだ」と説明しながら、「無駄も必要だ」と力説するダメ父を演じるオダギリジョーが、「自分の生活よりもっと大事なものがあるような大人になってほしい」と話す姿は、子ども以上に子どもっぽいのに憎めない大人として、不思議な説得力を持つ。

鹿児島には「かるかん」というお菓子がある。
私は1度だけ食したことがある。
この作品で、このお菓子が出てきた。
作中、「ぼんやりした味」だと言っていた航一が、最後の方で「くせになる」と言っていた。
この作品も、ぼんやり、いやほんのりして、後からじわじわ来る。

良作だった。

私が願う奇跡は何だろう。
梅雨真っ最中の夜、ちょっとだけ考えてみた。

それにしても桜島の火山灰があそこまでだとは知らなかった。



映画『奇跡』予告編