板頭(ばんとう)之感
よれよれたる哉天板(てんいた)、ふわふわなる哉古木(こぼく)、
五尺の小躯を以て此撓み(たわみ)をはからむとす。
フローリングの哲学竟(つい)に何等のオーソリティーを価するものぞ。
万有の真相は唯だ一言にして悉す、曰く「限界。」
我この恨(うらみ)を懐(いだ)いて煩悶終に張替を決するに至る。
既に板頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる張替は大なる作業に一致するを。
錆 操
原因は十数年前の福井豪雨で、床下を泥水が流れた事です。
我が家は築140年近い古民家なので、当然柱は石の上に載っているだけなので、
流れ込んだ泥水はそのまま流れ出て・・・床下はすぐに乾燥したと思っていたのでした。
が・・・
玄関先の広間の下はその泥水が貯まったままで(10年近く経ってもまだ表面はドロドロでした)
その為に床下の湿気でフローリングの下地の接着が剥がれ、歩くたびにたわむようになってきていたのです。
我が家のフローリングは天女と結婚する前にリフォームで張ったフローリングで、
つまり一般的な耐用年数はとっくに越えていると思われます。
しかしながら、このフローリングは303mm幅で溝がなく、しかも奥行3950mmが1枚板という超高級品
同じような材料で張り直したいと思っていたのですが、ネットで探しても見つかりません。
(応接室側の敷居を外した所です)
当然、大昔の施工ですから根太張り。
今は一戸建てでも捨て貼りが中心で、
ホームセンターやネットで探しても根太張りのフローリング自体がほとんどありません。
せめて1本溝のフローリングにしたかったのですが、模様と色味の気に入ったものがなく2本溝にしました。
という事で、とりあえず1箱(6枚1坪分)買って床の上に並べてみたのですが、
真ん中がやや黒っぽいものと外側がやや黒っぽい物があって、このバラツキを合わせる必要があります。
奥行きが3.95mという事はフローリング2枚並べただけでは足らず2列で5枚必要になるのですが、
1列2.5枚という事は1枚の右端と左端を使用する事で解決できるのですが、
1列目の右端が2列目の左端となるので、色合わせが大変です。
応接室や洗面所は床を張った後にリフォームしているので、
フローリングが下になっていて端のフローリングははがせない事は分かっていましたが
フローリングをまくってみると・・・
なんと303mmピッチで入るべき根太は、タルキではなく厚板が使ってあるのは良いのですが
その厚板間の隙間が40cmほどもある場所さえあるのです。
それを補正するために6mmほどの板が張ってあるのですが何の役にも立っていません。
つまり、根太を間に入れる作業も必要です。
ガーン!
まくってしまった床板はなにのぞむなくねがふなく
まくってしまった床板になすところもなく日は暮れる
錆 犀星
しかしながら錆鉄人は三日三晩脳にエネルギーを供給しながら(飲みながら)考えて、
遂に寸法取りと色合わせを解明したのでありました。
何度もこの元歌を書いていますが・・・
「巌頭之感」
悠々たる哉天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て此大をはからむとす。
ホレーショの哲学竟に何等のオーソリティーを価するものぞ。
万有の真相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解。」
我この恨を懐いて煩悶終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる悲観は大なる楽観に一致するを。
藤村 操