最近、演劇界を牽引してきた脚本家や演出家の訃報が続いている。
つかこうへいさん、井上ひさしさん・・・。
熱狂的に観劇していた頃の「彼らの活動は、私の楽しみだった」。
特に、つかさんに関しては、かなり影響を受けたと思う。
他にも好きな脚本家&演出家はいるけれども、つかこうへいさんの演劇は、
どの作品も素晴しかったと、今、しみじみと振り返っている。
私が熱をあげて観ていた頃は・・・・・
風間杜夫さん、平田満さん、根岸季衣さん、柄本明さん、加藤健一さん、などという
瞬く間に、有名になっていった(当時)無名に近い俳優人が演じていたが・・・・
(演劇界や演劇好きファンの間では、みんな、もちろん有名だったけれど・・・・)
つかさんの芝居を、最初に観た衝撃は忘れない。
面白かったし、わかりやすかったし、楽しかったし、しょっぱい涙がどくどくと流れた。
「蒲田行進曲」は、初演から観ている。 それなりの思い入れもある。
仕事が忙しくなってからというもの、演劇界や舞台観劇から徐々に遠ざかっていったが、
少ないお金を手にして、徹夜で千秋楽を観るために非常階段で夜をあかしたことなどを
とても懐かしく思い出す。
あの当時、当日券を求めて並びながら・・・隣の人と話し込んで友達になったりしたが、
「彼らは今、どのような生活をしているのだろう」。 懐かしい。
つかさんの訃報は、まるで“あの輝くような思い出”までもが、逝ってしまうようで、
とても切ない気分がした。
つかさんの芸名は、在日韓国人という生い立ちから、「いつか公平」になってほしい―
という願いが込められていたのだという。
ひらがなにしたのは、漢字が読めなかったお母様への配慮から・・・・。
演劇は、芸術作品である。
そしてまた、オリジナル作品には、常に作者のメッセージや願いが込められていて、
当時理解できなかったことが、今・・・とても、ひしひしと感じられることがある。
人の持っている「熱意」や「激情」、そして、「優しさ」や「穏やかな気持ち」、
そして、「生きることのひたむきさ」などを、ストレートに感じる。
当時は、ありのままのキャラクターが、ありのままのメッセージを伝える芝居だった。
もし現在の感受性と脳細胞と社会的知識があれば、もっと深い演劇解釈ができたのに!
とても残念だと思う反面、「今日一生」という言葉を改めて思いながら、まだまだ、日々
精進だとも感じたりする。
つかこうへいさんのご冥福を祈りながら、彼の今年の遺書を、下記、添付します。
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友人、知人の皆様、つかこうへいでございます。
思えば恥の多い人生でございました。
先に逝くものは、後に残る人を煩わせてはならないと思っています。
私には信仰する宗教もありませんし、戒名も墓も作ろうとは思っておりません。
通夜、葬儀、お別れの会等も一切遠慮させて頂きます。
しばらくしたら、娘に日本と韓国の間、対馬海峡あたりで散骨してもらおうと思っています。
今までの過分なる御厚意、本当にありがとうございます。
2010年 1月1日 つかこうへい