Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』

2018-08-18 | Weblog

「あの日のこと。」と、帯にある。

太平洋戦争開戦の日を人々がどう迎え、どう受け止めたのかがまとめられている。

 

「ものすごく解放感がありました。パーッと天地が開けたほどの解放感でした。」(吉本隆明)

「今日みたいにうれしい日はまたとない。うれしいというか何というかとにかく胸の清々しい気持だ。」(黒田三郎)

「僕は、アメリカとの戦争が始まったとき、二、三の客を前にしながら、不覚にも慎みを忘れ、「ばかやろう!」と大声でラジオにどなった。」(金子光晴)

「清沢は「けさ開戦の知らせを聞いた時に、僕は自分達の責任を感じた。こういう事にならぬように僕達が努力しなかったのが悪かった」と、感慨をもらした。」(正宗白鳥)

 

等々、知っているものもあったが、知らなかったものもある。

漫画一冊よりも早く読める軽さだが、内容は重い。

受け止めやすいだろうから少年少女に贈りたいが、大人こそ読むべきだろう。

過去の戦争のことよりも、昨今の、違憲の集団的自衛権合法化の動きや共謀罪にまつわる騒ぎ、そういった事態にどう態度表明をするかというとき、私自身が味わった孤立感、そして理不尽さに対する怒りがこの世の中に浸透していかないいたたまれなさに、思いが至る。この頃と今と、どう違うというのだろう。

 

 

以下、方丈社ホームページより。

 

あの日のこと。
昭和16年12月8日、太平洋戦争勃発。あの日、日本人は戦争をどう感じ、何を考えたのか? 当日の知識人・著名人の日記、回想録から偽らざる戦争の実感を甦らせる。
付録:太宰治短編小説『十二月八日』。

「きょうの日記は特別に、ていねいに書いて置きましょう。昭和十六年の十二月八日には日本のまずしい家庭の主婦は、どんな一日を送ったか、ちょっと書いて置きましょう。もう百年ほど経って……こんな生活をしていたという事がわかったら、すこしは歴史の参考になるかも知れない。」(太宰 治『十二月八日』より)

 

◆ 目次

ラジオニュース(午前七時) 
吉本隆明/鶴見俊輔/加藤周一/黒田三郎/ピストン堀口/新美南吉/岡本太郎
ラジオニュース(午前十二時・東條英機首相演説) 
野口冨士男/竹内 好/埴谷雄高/保田與重郎/中島敦/火野葦平/亀井勝一郎
ラジオニュース(午前十二時三十分①)
高見順/坂口安吾/伊藤 整/神山茂夫/木山捷平/阿部六郎/古川ロッパ/島木健作
ラジオニュース(午前十二時三十分②) 
今日出海/山本周五郎/上林暁/中野重治/矢部貞治/井伏鱒二/横光利一
ラジオニュース(午後三時) 
尾崎士郎/金子光晴/獅子文六/近衛文麿/河合栄治郎/清沢洌
ラジオニュース(午後五時) 
青野季吉/中江丑吉/室生犀星/木戸幸一/長与善郎/折口信夫/木下杢太郎
ラジオニュース(午後七時) 
東條英機/高村光太郎/秋田雨雀/斎藤茂吉/松岡洋右/永井荷風/正宗白鳥
ラジオニュース(午後九時)
真崎甚三郎/徳田秋声/鶯亭金升/幸田露伴/徳富蘇峰
「十二月八日」太宰 治 
略歴一覧
解説:武田砂鉄

 

◆ 編集者からひとこと

 意外なことだが、知らないうちに始まっていた太平洋戦争に、多くの国民、知識人は感動した。戦争を体験したことのない世代が、ほとんどとなりつつある現在、日本が体験した直近の戦争を振り返り、「あの日、日本人は戦争をどう感じ、何を考えたのか?」を追体験してみるという意図のもとに、本書は編まれた。太平洋戦争の勃発に、短編小説『十二月八日』で応えた太宰治は、こう書いている。「きょうの日記は特別に、ていねいに書いて置きましょう。昭和十六年の十二月八日には日本のまずしい家庭の主婦は、どんな一日を送ったか、ちょっと書いて置きましょう」。太宰治が書き、伝えようとした言葉を、77年後の私たちは、どう受けとるのだろうか。

 

コメント
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