『憲法くん』は、入管=入国管理局で、今起きている問題を、描いている。
入国管理局に定期的にボランティアとして面会等の支援を行っている織田朝日さんに、ご協力いただいている。
入国管理局の面会室の壁には、収監された人たちの落書きがあるという。「くるしい」「たすけて」「日本に来てばか」等と書かれているそうだ。
ここにいるのは難民認定申請者と、非正規滞在者。ビザを持たないかそれが有効でなく、何らかの事情で在留資格をなくした。
入国管理局の収容所は刑務所のようだが、いつ出されるかわからない。半年か一年か三年か。難民認定申請中の彼らに対して、「仮放免」か「収容」かが、きわめて恣意的に決められている。
この劇に登場する人たちのモデルになっている実在の人たちが、じっさいにまだ入管に収容されたままであるということが、ほんとうにいたたまれない。
舞台美術のフェンスで区切られたエリアは、「保護室」を設定したものだ。もちろんじっさいのものとは違う(写真)。
千三百人近い収容者のうち、半数以上が半年以上の収監。長い人は七年に及ぶ。各所でハンスト事件が起き、出入国在留管理庁は、ハンスト中止と血液検査を条件に「仮放免」するとした。しかし、わずか二週間程度で、ほとんどが再収容されてしまう。
二〇一六年以降、仮放免者が減ったのは、条件が厳格化されたためである。法務省、厚生労働省、警察庁、三省庁による合意文書が出されたからだ。オリンピック・パラリンピックに向け「世界一安全な国・日本」を目指すとして、外国人対策の取り締まりを強化したのだ。オリンピックと難民に、何か関係あるというのか。
欧州連合は送還までの収容期限を原則六カ月と決めている。今の日本の入管は、処遇の内容が国際人権規約や難民条約で求められる水準に達してない。日本の入管は国際人権機関、国連人権委員会から何度も注意を受けている。
この劇に登場するマルクスの言葉には、こうある。「人間とは自分の運命を支配する自由な者のことである」。この場では、それが果たされていない。
相手が外国の人間であっても、憲法で保証される人権の考え方の対象でなければならないと、私は思う。
憲法第31条「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」
憲法第98条「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」
そして、憲法前文に、こうある。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」。お互いを「平和を愛する諸国民」として信頼しあえる関係。憲法精神は、世界の平和を望むものだ。
「平和を愛する諸国民」である隣人に対して、このような不当な振る舞いをしてはならない。それを許容することは、戦争を容認することと繋がると、私は考えるのだ。
写真は、東京公演。左から、猪熊恒和、町田敬介、杉山英之、鬼頭典子。撮影・姫田蘭。
松元ヒロ原作・燐光群による演劇版『憲法くん』、今年最後の上演は、名古屋となります。
名古屋近辺の皆様、ぜひぜひご覧ください。
12月19日(木)19:00 開演 12月20日(金)14:00 開演
愛知県芸術劇場 小ホール
受付開始○開演の40分前 開場○開演の30分前
http://rinkogun.com/Kenpo-kun_Nagoya.html