私のクラスで転入生を受け入れることになった。
「え~、メッチャ可愛いじゃん」
他県から引っ越してきた女の子だが、美少女という言葉がピッタリの端正な顔立ちで、実に目立つ。教室に連れて行くまでに、廊下を歩いていた生徒がみな振り返っていた。
「早川楓です。よろしくお願いします」
もちろん仮名であるが、「実名出しちゃっていいんですか?」といらぬ心配をされてもいけないので、念のため……。
楓ちゃんは、後ろの席の女子と仲良くなったようだ。彼女も大人びた美人なので、二人揃っていると人目を引く。
「いいな、笹木先生のクラス。可愛い子ばっか」
隣の組の男子が羨ましがっていた。転入生がひとり増えただけで、平均点がグンと上がったらしい。私が褒められたわけでもないのに、なぜか「ほっほっほ」と得意になって笑う。女子だけでなく、男子も何人かはイケメンなのだが、そこはスルーされた。
顔だけよくて、性格の悪い生徒もいる。でも、楓ちゃんは違うようだ。
「女子の保健委員、誰かやって~」
年度初めには係や委員会を決めるのだが、健康診断で一日駆り出される保健委員は人気がない。男女ひとりずつ決めなければならず、私は生徒に声をかけていた。
すると、楓ちゃんの手が上がった。
「あのう、私でよければやりますよ」
「えっ、ホント? うれしい~!」
早速、黒板に名前を書こうとチョークを握った。しかし、手が動かない。
あれ? 楓ちゃんの苗字、何だっけ……。
こういうときに限って、教室は静まり返っている。頭の中は、真っ白というより、がらんどうのようだ。まったく苗字が思い出せない。年はとりたくないものだ。
苦しまぎれに、私は「楓」と書いた。
「先生! 何で苗字じゃないの?」
「名前忘れちゃダメじゃん!」
次の瞬間、苦笑と同時にヤジが飛んできた。
「ひええええ~」
名簿で名前を確認し、「早川」と訂正する。あとは平謝りだ。
いかん、いかん。
↑
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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
「え~、メッチャ可愛いじゃん」
他県から引っ越してきた女の子だが、美少女という言葉がピッタリの端正な顔立ちで、実に目立つ。教室に連れて行くまでに、廊下を歩いていた生徒がみな振り返っていた。
「早川楓です。よろしくお願いします」
もちろん仮名であるが、「実名出しちゃっていいんですか?」といらぬ心配をされてもいけないので、念のため……。
楓ちゃんは、後ろの席の女子と仲良くなったようだ。彼女も大人びた美人なので、二人揃っていると人目を引く。
「いいな、笹木先生のクラス。可愛い子ばっか」
隣の組の男子が羨ましがっていた。転入生がひとり増えただけで、平均点がグンと上がったらしい。私が褒められたわけでもないのに、なぜか「ほっほっほ」と得意になって笑う。女子だけでなく、男子も何人かはイケメンなのだが、そこはスルーされた。
顔だけよくて、性格の悪い生徒もいる。でも、楓ちゃんは違うようだ。
「女子の保健委員、誰かやって~」
年度初めには係や委員会を決めるのだが、健康診断で一日駆り出される保健委員は人気がない。男女ひとりずつ決めなければならず、私は生徒に声をかけていた。
すると、楓ちゃんの手が上がった。
「あのう、私でよければやりますよ」
「えっ、ホント? うれしい~!」
早速、黒板に名前を書こうとチョークを握った。しかし、手が動かない。
あれ? 楓ちゃんの苗字、何だっけ……。
こういうときに限って、教室は静まり返っている。頭の中は、真っ白というより、がらんどうのようだ。まったく苗字が思い出せない。年はとりたくないものだ。
苦しまぎれに、私は「楓」と書いた。
「先生! 何で苗字じゃないの?」
「名前忘れちゃダメじゃん!」
次の瞬間、苦笑と同時にヤジが飛んできた。
「ひええええ~」
名簿で名前を確認し、「早川」と訂正する。あとは平謝りだ。
いかん、いかん。
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