これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

もし10日間の休暇があったら

2020年01月19日 21時58分13秒 | エッセイ
 先日、「働き方改革の推進」なる研修を受けた。
「もし、週3日間定時で帰れるとしたら、10日間の休暇がもらえるとしたら、あなたは何をしたいですか」
 講師が受講者たちに問いかけてきた。
 私の職場は17時が定時なので、早く帰れるとしたらやりたいことは山ほどある。まず、本を読みたい。最近、夏目漱石に凝っているから、借りた本を終わらせたいのだ。それから運動もしたい。筋トレ、散歩、ジョギングなどをすれば、気分転換になるだけでなく体力アップも図れる。



 10日間連続して休めるのであれば、海外旅行だろう。好みはヨーロッパ。「プラハが一番よかった」という感想を聞いたことがある。でも、オランダにも行きたいし、スペインだって魅力的。ああ、迷うなぁ。
 講師がさらに続ける。
「みなさん、いかがですか。お隣の方と、ご意見を交換してみて下さい」
 私の隣の席には、もうすぐ定年になりそうな年代の男性がいた。でも、私の視線を無視して、まっすぐ前を見たままだ。これは「私に話しかけないで」という意味だろう。まず話の弾まないタイプに見えた。あえて関りを持つ必要はないので、こちらも視線を前に戻す。
「やりたいことなんてないよ、という方はいらっしゃいませんでしたか? 休みがあっても家に居場所なんてないし、困るなという方も」
 講師のツッコミに、会場がドッと沸く。隣の男性も、小さな声を出して笑っているらしい。そうか、この人は話したくなかったのではなくて、話すことがなかったのか。仕事を取ったら、何も残らない人なのかもしれないと推測した。
「ぜひ、やりたいことを見つけることから始めて下さい」
 研修は、長時間労働の弊害、働き方改革の意義、やり方などに踏み込み、退屈することなく終了した。
 いい時代になったと思う。4年前はまだ「職場に長くいる人ほど偉い」という空気が蔓延していた。当時の校長ですら「17時に帰る人はいらない」と言い放つ始末で、業績評価が辛くなることを覚悟して子育てするような雰囲気があった。こんな上司の下で働くのは苦行でしかない。
 ところが、「教員はブラック」という評判が定着するにつれ、教員採用試験の受験者が減り続けたからだろう。急に「働き方改革」が問われるようになり、昨年あたりから「長時間労働は悪」に変わったのだから、方向転換についていけない人もいるに違いない。
 そもそも、「長時間、職場にいると怒られるから、やりたいことを見つけよう」で生産性が上がるのだろうか。「やりたいことがあるから、早く仕事が終わるように頑張ろう」でないと、成果には結びつかない気がする。隣に座っていた男性が、クッキーを焼いたりジョギングを始めたりするとは思えないが、何か見つけてもらわないと部下が可哀想だ。
 ひとまず、私は「週イチで18時に退勤する日を作る」目標を作った。
 今週は、明日をその日にして、早く帰ろうっと。
 ウキウキ♪


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コメント (11)
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