しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「ゲド戦記Ⅴ アースシーの風」 アーシュラ・K・ル=グウィン  

2006年04月19日 | 読書
「帰還」から数年たったアースシー。
ゲドとテナーとテハヌーは一緒に暮らしていた。しかし、西の方に竜が現われ始める。
テハヌーが竜のカレシンを呼び出し、カレシンはテハヌーを娘と呼んだ事から、竜の事は知りたいと、ハブナーの王、レバンネンはテハヌーとテナーをハブナーに招く。
ゲドにも来て欲しかったのだが、魔法を失ったゲドは誰にも会おうとはしなかった。
一人で留守居をしているゲドのもとにハンノキと言う、まじないしが訪ねて来る。
ハンノキは妻を亡くしてから、死者と生者の境の石垣の夢を毎夜見て悩まされていた。
始めは妻のユリが呼ぶだけだったが、段々死者の数が増え、石垣を壊そうとし、ハンノキに「自由にしてくれ」と訴えるのだと言う。
始めは同じ町の魔法使いに相談し、ローク行けといわれ、ロークの学院の長に話したら、ゴントに行けと言われ、ゲドのところまで来たのだった。
ゲドは動物のぬくもりが悪夢を遠ざけると、子猫を借りてくるが、他に出来る事はなかった。
しかし、話を聞くうち、その石垣と竜と繋がりがある事に気が付き、ハンノキにテハヌーに会う様に、ハブナーに向かわせる。
ハブナーでは、テハヌーが竜と会い、アイリアンと話し合いが出来るように話をまとめる。
アイリアンは、竜と人間の歴史を語り、人間が約束を破っている事を伝える。
その決着をつける為、アイリアン、テハヌー、レバンネン、ハンノキ達はローク島の『まぼろしの森』に向かう。
もう一人、カルガドの大王の姫、セセラクが加わる。カルガド人は竜の教えを守っている為、ハブナーの人々とは違う信仰をもっていた。


これが、海に散らばる島々の国、そして竜のいるアースシーの国、最後の話。
魔法を失ったゲドは最後まで、魔法を取り戻す事はなかった。
しかし、人間としてはしっかり自分の事を知った聖人と呼べる、穏やかな他人の気持ちになれる人間になっていた。
これが、人間の到達点なのだろう。
話はゲドから離れ、竜と人間の関係が大きな要素になる。
どこまでも、竜の存在は魅力的だ。人間が冨を選んだのに対し、竜は自由を選んだ。自由に飛翔出来る竜は時空をも越えるものだった。

竜と人間が同じ世界にいた、アースシーでも、ついに竜は姿を消す事になる。
この後、アースシーは今の、私達のいる世界と同じ様になっていくのだろうか。
しかし、ア-スシーの世界は、貧しい暮らしの人も多く、女性やまじない師が差別され、民族間の争いもある、決して住みよい、平和な世界ではないと思う。
ゲド戦記は、その中で自分のするべき事を、しっかりやっている人々の物語だった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« THE ALFEE LIV... | トップ | 「天使の鬱屈」 アンドリュ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事