日本女子はなぜ海外でモテるのか? 高野秀行『異国トーキョー放浪記』

2016年10月24日 | 

 日本の女の子は海外でモテる。

 というのは外国を旅行していると、よく聞く話である。

 理由に関してはさまざまに推測され、旅先の外国人に聞いてみると、

 「黒髪が神秘的」

 「おしとやかなのがいい」

 「オシャレだよね」

 といった好意的なものから、

 「貞操観念がゆるくてナンパしやすい」

 などといった問題ありな意見が出てくることもあるが、ともかくもモテること自体は間違いがないようだ。

 中でも、「この人がいうんやったら、こらホンマもんや」と、日本女子の海外でのモテ力を確信したのは、「辺境作家」高野秀行さんの『異国トーキョー放浪記』を読んでいたときのこと。

 高野さんはひょんなきっかけで、スーダンからの留学生と出会うこととなった。

 マフディさんというその人は視力に障害があって、いっさい目が見えない。

 そんな大きなハンディにもかかわらず「スーダンの東大」ことスーダン大学を卒業し、その勢いで日本にも留学し、なんと難関東京外語大学に「一般入試」で合格したという、サイヤ人ならぬ最強のスーパースーダン人なのである。

 そのマフディさん、頭脳明晰で苦境にめげない努力家であるとともに、そのキャラクターもなんともユニーク。

 まず趣味が「プロ野球観戦」というから、いきなりおもしろいではないか。

 スーダンで野球がメジャーな競技とも思えないし、根本的なところでいえば、失礼ながら目が見えないのにどうやって「観戦」を楽しむのかと問うならば、

 「ラジオであの熱気を味わうのです」。

 日本に来て野球に魅せられたマフディさんは、野球を「勉強」したのだという。おそらくは点字の本などでルールなどを覚えたのであろう。プレーだけでなくプロ選手の知識にもすごくくわしいそう。

 くわえてマフディさんは、鈴をつけて音で場所がわかるように工夫した柔らかいボールを使う「盲人野球」でも選手として活躍。

 プレーにまで足を踏み入れるとは、さすがはスーパースーダン人。ともかくも、能力だけでなく行動もメチャクチャにパワフルな人なのだ。

 そんなマフディさんのひいきのチームはカープ。

 スーダンでは日本に原爆が投下されたことを学校で教える影響で、日本の街といえば東京でも大阪でもなく、まず「ヒロシマ」だったからだそう。

 さらには日本だけでなくメジャーリーグまでチェックしていて、

 「ソリアーノは元々ドミニカのカープ野球アカデミー出身なんですよ」

 とか語るのだからおそれいる。プロ野球雑誌は、すぐさまマフディさんにライターか評論家として活躍してもらうべきだろう。

 実際、高野さんは球場でマフディさんと「解説者ごっこ」をやったときに、

 「プロ野球の解説をする目の見えないスーダン人」

 として売り出そうと一瞬考えたらしい。アイデアのインパクトはすばらしいが、その計画はすぐさま頓挫することとなった。

 マフディさんのあまりの知識、分析力、日本語能力の達者あまねきために、

 「完璧な解説すぎて、本物の外国から来た盲人と認めてもらえそうにないから」

 「ガイジン」のタレントは流暢な日本語ではダメなのである。「ワッタッシーワー」みたいななまりがないと売りにならないのだ。

 そんな「超盲人」ともいえるマフディさんが、高野さんの友人とおしゃべりしていると女の子の話になり、こう聞かれたことがあった。

 「どこの国の女性が好み?」

 スーダン人の回答は、

 「やっぱり日本人の女の子ですね」

 出た。やっぱり日本女子はモテるのだ。で、その理由というのを問うならば、

 「だって、めっちゃかわいいもん!」。

 みなさま、どうであろうか。

 目が見えない外国人にも「かわいい」といわれる日本人女性。

 ある意味「最強」のモテ力と言えのではなかろうか。これを読んだとき、私は理屈抜きで日本女子がモテることを認めざるを得なかったのである。

 やはり日本女子の「KAWAII」はケタはずれだ。我々「持っていかれる」立場としては困ったものではあるけど。





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