おそるべき替え歌すりこみ体験記 「朝まで働けダウンタウン」『ロッキー』のテーマ編

2017年04月04日 | 音楽

 前回(→こちら)に続いて、替え歌の話。

 替え歌というのは楽しいが、同時に呪縛力もすごい。

 一度でもな歌詞がインプットされてしまうと、もうの歌詞では歌えなくなってしまうこともあり、注意が必要だ。

 フランツシューベルトの「軍隊行進曲」が、ファミコンゲーム『チャレンジャー』の一面のBGMにしか聞こえなくなったり。

 日本中で愛される「たぬきのきんたま」が、実のところ元ネタは荘厳な宗教音楽だったりと、一度すりこまれてしまったら、もう

 

 「あのころの自分には戻れない」



 そこで前回、ベートーヴェン第九と、カップうどん「どん兵衛」のコラボ(?)について語ったが、もうひとつ強烈な印象を残した替え歌というのがコレ。

 

 「ロッキーのテーマ」



 『ロッキー』といえば、今さら説明するまでもなく、シルベスタースタローン主演の映画。

 無名のボクサーくずれであるロッキーが、再起をかけて戦うストーリーもさることながら、この作品を後世に残す要素に、あのテーマソングがある(→こちら)。



 パパーパー、パパーパー。



 名曲であり、ボクサーのみならず、気合いを入れるために聴く映画の曲としては、『地獄の黙示録』のヴァーグナーと双璧を為すであろう。

 ちなみに私はヴァーグナー派ボンクラはなぜかヴァーグナーが好き。パンパパパーパーパンパパパー。

 そんな名曲ロッキーだが、はじめてこの曲と出会ったのは、映画ではなく、おもしろコントであったところが不幸のはじまり。

 大阪で年末に放映していた『朝まで働けダウンタウン』という番組で、今田耕司さんと東野幸治さんが組んでコントをするというコーナーがあったんだけど、その「Wコージ」が披露したネタというのが、「ロッキーのテーマ」。

 そこで二人は、合唱隊の皆さんとともに、あの名曲を替え歌にするのだが、その歌詞というのが、


 エイドリアンはブサイク

 いつも毛糸の帽子

 だけど彼女はフランシス・コッポラの妹

 それでもヒロイン

 ロッキーの恋人

 そんな彼女はフランシス・コッポラの妹



 Youtubeなどでも、残念ながら見つからなかったんだけど、これがもう、はじめて聴いたとき、腹をかかえて笑ってしまった。

 これは、実際に耳にしてみないと、なかなか、わからないかもしれない。

 だまされたと思ってみなさまも、ロッキーのテーマにのせて、何回か歌ってみてください。そのメロディーとのハマりっぷりがわかります。

 エイドリアンはブサイク、いつも毛糸の帽子、「ほっといたれよ」という話である。

 まあたしかに、あのタリアシャイアの貧乏くさ……もとい生活感あふれる雰囲気があるからこそ、あの「エイドリアーン!」というギャグも生きるわけだが(あれはギャグじゃないって)。

 さらに悪かったのが、これに大ウケした私だけでなかったこと。

 クラスの悪友たちも、やはりこの替え歌に爆笑し、



 「おい、年末のダウンタウン見たか」

 「今田東野のコント、めっちゃ笑ったなあ」



 などと報告しあい、冬休み中、遊びに行くといえば皆で

 

 「えいどりあんは~」

 

 と歌いまくったのである。インプリンティング完了

 こうなると、もうオチはおわかりであろう。

 私が映画にハマって、洋の東西を問わず見まくることになるのは20歳くらいのことであったが、その中にもちろんのこと、『ロッキー』も存在した。

 本来なら、『ロッキー』はそのハングリーさからいって、島本和彦アオイホノオ』のモユル君のごとく、男の燃える魂を、ガンガンと打つはずであった。

 嗚呼、だがあにはからんや。私の脳には、すでにあの替え歌がインプットされている。

 おかげで、ロッキーのロードワークのシーンも、リング上で見せる不屈闘志も、

 

 「そこや、ロッキー、がんばらんかい!」

 

 感情がグッと高ぶった瞬間、頭の中に流れるのは



 「えいどりあんは~ぶさいく~」



 これでは、どんな感動的なシーンも腰砕けである。

 ロッキーとエイドリアンの、素朴で不器用な愛のシーンでも、

 

 「いつも~けいとのぼ~し~」



 だめだあ! 全然感動できない。もうトホホのホである。

 かくのごとく、私は替え歌の影響力により、一本の映画から感動を奪われた。まさに「映画が盗まれている」。

 もしかしたら、ここをお読みの方の中には『ロッキー』を未見で、かつ素直にも私の言う通りにあの歌詞を5、6回歌ってしまった、という人がおられるかもしれない。

 だとしたら、もうあなたは爆笑することなく、あの映画を観ることはできません。

 それほど、この替え歌は強烈。ご愁傷様としかいいようがない。



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