「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」。
という記事が日本の新聞に掲載されたと、雑誌『旅行人』に紹介されたことがあった。
日本は空手の国である。
海外旅行で、とくにイスラムの国などでは、よく子供に「カラーテ!」などと声をかけられることがあった。
沢木耕太郎さんの名著『深夜特急』でも、主人公がイタリアの田舎町で子供に、
「カラーテ!」
「マスタツ!」
などと声をかけられるシーンがあった。
どうやら、ずいぶん昔から世界の日本観は変わっていないらしい。もっとも、マス大山が主人公の『空手バカ一代』はたいそうおもしろいマンガなので、イタリアン小僧ならずとも日本人と見れば「カラーテ!」といいたくなる気持ちは理解できる。
それくらい空手というのは国際的に有名なのであるが、それにのっかって、うっかりサービス精神を発揮して、
「イエス、カラーテ!」
などといって構えを取ったりすると、
「すげえ! 本物の空手だ! 実はオレの兄ちゃん、ボクシングをやってるんだ。よかったらどっちが強いか戦ってみてよ」
などといわれて、耕太郎のように焦ることになる。
これは、旅行者にとっての「カラーテあるある」で、私が聞いた話では、ある旅行者がノリで「イエス、カラーテ」と返したら
「すげえ! 空手だ。よかったら、こいつと戦ってみてくれよ」
と、犬のドーベルマンを連れてこられたそうである。勝てるかそんなもん!
そんな世界で愛されている空手だが、「強盗をノックアウト」となれば、これはことが穏やかではない。
詳細を読むと、フィリピンのある島で、日本人女性旅行者2人が夜、3人組の強盗に襲われたそうだ。
強盗はピストルをつきつけ、金目のものを奪うと、2人のうちの1人を強引にバイクに乗せ誘拐しようとする。
おそろしい話だ。海外で女性が夜で歩くのはあぶないが、そもそも金持ちで警戒心のうすい日本人は、悪者にねらわれやすい。
すわ! 大ピンチ! と思いきや、そこで「とう!」という、勇ましき声が、夜の闇に響きわたった。
その刹那、取り残されそうになった女性の見事な跳び蹴りが、走り去ろうとした運転手の後頭部にヒットしたのだ。
悲鳴を上げ、バイクから転げ落ちる強盗。そこからさらに女性は、
「キエー!」
「チェストー!」
という裂帛の気合もろとも、力道山ばりの空手チョップで、他の2人の強盗に応戦し、激闘の末見事にノックアウト。
劣勢になった強盗はピストルを撃とうとしたが「ウォワタア!」という怪鳥声とともにくり出された回転蹴りによって、はたき落される。。
女性は、取り落とした銃を拾い上げると、空に向かって一発威嚇発砲。
そうなるともう、たかだかチンピラの強盗たちは戦意喪失。こりゃかなわんとばかりに、スタコラと逃げ出したそうである。
かくして、空手美女、見事強盗をやっつける、の記事が現地の新聞に載り、翻訳されて日本でも紹介されたそう。それが流れて、『旅行人』蔵前仁一編集長の耳にも入ったというわけだ。
アッパレ大和撫子というか、すごい女性がいたものである。まるでチャーリーズ・エンジェルだ。フルスロットル!
かくして、フィリピンでは「日本の空手はすごい」と評判になり、マス大山の意志はこのようにして、また世界へと伝わっていくのであった。めでたし、めでたし。
と、まとめておしまいといいたいところだが、この話には続きがあった。
一見、海外の「おもしろニュース」と見せかけて、このフィリピン発の記事には、とんでもないからくりがしかけられていたのだ!
一読驚愕の、その結末とは。
次回に続く(→こちら)。
という記事が日本の新聞に掲載されたと、雑誌『旅行人』に紹介されたことがあった。
日本は空手の国である。
海外旅行で、とくにイスラムの国などでは、よく子供に「カラーテ!」などと声をかけられることがあった。
沢木耕太郎さんの名著『深夜特急』でも、主人公がイタリアの田舎町で子供に、
「カラーテ!」
「マスタツ!」
などと声をかけられるシーンがあった。
どうやら、ずいぶん昔から世界の日本観は変わっていないらしい。もっとも、マス大山が主人公の『空手バカ一代』はたいそうおもしろいマンガなので、イタリアン小僧ならずとも日本人と見れば「カラーテ!」といいたくなる気持ちは理解できる。
それくらい空手というのは国際的に有名なのであるが、それにのっかって、うっかりサービス精神を発揮して、
「イエス、カラーテ!」
などといって構えを取ったりすると、
「すげえ! 本物の空手だ! 実はオレの兄ちゃん、ボクシングをやってるんだ。よかったらどっちが強いか戦ってみてよ」
などといわれて、耕太郎のように焦ることになる。
これは、旅行者にとっての「カラーテあるある」で、私が聞いた話では、ある旅行者がノリで「イエス、カラーテ」と返したら
「すげえ! 空手だ。よかったら、こいつと戦ってみてくれよ」
と、犬のドーベルマンを連れてこられたそうである。勝てるかそんなもん!
そんな世界で愛されている空手だが、「強盗をノックアウト」となれば、これはことが穏やかではない。
詳細を読むと、フィリピンのある島で、日本人女性旅行者2人が夜、3人組の強盗に襲われたそうだ。
強盗はピストルをつきつけ、金目のものを奪うと、2人のうちの1人を強引にバイクに乗せ誘拐しようとする。
おそろしい話だ。海外で女性が夜で歩くのはあぶないが、そもそも金持ちで警戒心のうすい日本人は、悪者にねらわれやすい。
すわ! 大ピンチ! と思いきや、そこで「とう!」という、勇ましき声が、夜の闇に響きわたった。
その刹那、取り残されそうになった女性の見事な跳び蹴りが、走り去ろうとした運転手の後頭部にヒットしたのだ。
悲鳴を上げ、バイクから転げ落ちる強盗。そこからさらに女性は、
「キエー!」
「チェストー!」
という裂帛の気合もろとも、力道山ばりの空手チョップで、他の2人の強盗に応戦し、激闘の末見事にノックアウト。
劣勢になった強盗はピストルを撃とうとしたが「ウォワタア!」という怪鳥声とともにくり出された回転蹴りによって、はたき落される。。
女性は、取り落とした銃を拾い上げると、空に向かって一発威嚇発砲。
そうなるともう、たかだかチンピラの強盗たちは戦意喪失。こりゃかなわんとばかりに、スタコラと逃げ出したそうである。
かくして、空手美女、見事強盗をやっつける、の記事が現地の新聞に載り、翻訳されて日本でも紹介されたそう。それが流れて、『旅行人』蔵前仁一編集長の耳にも入ったというわけだ。
アッパレ大和撫子というか、すごい女性がいたものである。まるでチャーリーズ・エンジェルだ。フルスロットル!
かくして、フィリピンでは「日本の空手はすごい」と評判になり、マス大山の意志はこのようにして、また世界へと伝わっていくのであった。めでたし、めでたし。
と、まとめておしまいといいたいところだが、この話には続きがあった。
一見、海外の「おもしろニュース」と見せかけて、このフィリピン発の記事には、とんでもないからくりがしかけられていたのだ!
一読驚愕の、その結末とは。
次回に続く(→こちら)。