クラスのイケてる男子と「なんでも笑う女の子」は恐怖の観客 その4

2017年10月01日 | うだ話

 前回(→こちら)の続き。

 男が文化祭の公演などで、全然ウケてくれないのは、演者の力量もさることながら、彼らが



 「自分は笑いのセンスがある」



 自負しているから。そのため、そこには「勝ち負け」「ヒエラルキー」がからんできてややこしい。

 今は知らねど、私がヤングのころの関西男子は「おもしろいかどうか」がスクールカーストの選考基準になっており、ところがそれはスポーツや勉強のような客観的数字で結果が出ないため、とかく「自己申告」で決まりがちだ。
 
 なので、必然クラスの人気者が根拠もなく「オレが一番」と君臨し、お笑い養成所でもないに日々「勝負」がくり広げられ、その格付けもほとんど「女子人気」と「身内のノリ」が重視されるからハタの者は困りものだ。

 その例として、高校時代のクラスメートであるマツダ君をあげてみるが、彼はいわゆる



 「特におもしろいわけではないが、明るい性格がいいおかげで女子から無条件の笑いをゲットできるため、自分のことを『笑いの才能がある』と、ややカン違いしている関西によくいる男子」



 なのであるが、「お笑いセンスのある」彼は女子相手ならともかく、「顔がいいから」という理由では好意的にはならない我々男子にも、同じノリでボケてくるのが玉に瑕。



 「シャロン君、キミ昨日遅刻してきたやんなあ。ちゃんと先生に電話した? でも《電話に出んわ》とかいったりして。今のおもろいやろ、アッハッハ」



 なんて言って女子から



 「いやーん、マツダ君めっちゃおもしろーい」



 などとウケを取っているわけだが、こちらとしては「そうでっか……」としか答えようのない状況だ。

 まあ、私もそこはを重んじる日本男児なので「なんでやねーん」なんて、いつもは笑顔でつっこんでいたのだが、あるとき少々めんどくさくなって、ちょっとした「仕掛け」をしてみることにしたのだ。

 彼の「遅刻して、電話に出んわ」というボケに対し、



 「いやあ、天気は関係ないねん。ただ、ちょっと2時間くらい宇宙人に誘拐されてただけやから」



 目には目をなハムラビ法典的「つまらないボケ返し」をしてみた。

 自分としてはこれは、あえてこれをかますことによって、



 「キミのやっていることも、この程度のことなんだぞ。どうだ、迷惑だろう。青年よ、今キミがあるのは、周囲の思いやりで成り立っていることを、たまには自覚しても損はあるまい。一度、これを機会に自己を振り返ってみてはどうか」



 という理解をうながす、そんな意図を持った、



 「友としての、遠回しで思いやりある啓蒙活動



 のつもりであった。

 要は「おもんな!」と思っていただいたのちに、「ということは、オレのギャグも……」と、「人の振り見て我が振り直せ」になってくれればいいかな、と。

 ところが、これが思わぬ方向に転がることとなった。マツダ君はふと真顔になって、



 「なんやそれ。宇宙人なんか、おるわけないやんけ!」



 そう、つっこんできたのだ。

 これだけなら、クラスメート同士の罪のないじゃれあいであり、高校生のくだらないやりとりだが、そのツッコミを発した瞬間のマツダ君の表情はそんな能天気なものではなかった

 その「おるわけないやんけ!」のあとすぐ、彼は「!」と小さく声をあげた。

 そうして、5秒ほど呆然としたように、私の顔を凝視していたのだ。

 その気の抜けたような顔には、ありありとこう書かれてあった。



 「し……しまった……」


 
  それを見て当時17歳の私は、同じように思ったのだ。



 こっちこそ……しまった……」



 (続く→こちら




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