「ゲーム好きは、たしかにこの状況には強いかもしれへんねえ」。
テレビ電話越しに、そんなことを言ったのは友人トネヤマ君であった。
昨今、コロナの影響で外出が制限されており、家での過ごし方は人それぞれであるがトネヤマ君は、
「オレはゲーム好きやからなあ。まあ、家出るなと言われても、そんなに困ることはないかもね」。
『将棋世界』で連載を持っていたこともある編集者の山岸浩史さんは、かつて、
「牢の中でネット将棋が指し放題なら、終身刑を宣告されてもかまわない」
という名言(?)を残し、将棋関係者をあきれ……感動させたものだが、そういやトネヤマ君も昔、
「24時間ゲームだけして、他のことせんと過ごせるんやったら、家から一生出られへん、死ぬまで誰とも会われへんって言われても平気やな」
山岸さんと、ほとんど同じことを言っているわけで、デジタル・アナログ問わず、「ゲーム」というのはそれだけ人を惹きつけるのだろう。
私自身、今ではほとんどやらないが周囲にゲーマーは多く、なかなかの「インシテミル」ぶり。
友人ジョウナン君はRPGが好きすぎて『クロノ・トリガー』『グランディア』『ヴァルキリープロファイル』といったお気に入りのゲームを、ふつうにクリアするだけは物足りず、
「主人公だけ操作してクリア」
「魔法なしでクリア」
など「縛りプレイ」をやりつくし、ついにはネタ切れになり、「目をつぶりながらクリア」などという神業に挑戦してた。
友人ハタ君は一時期オンラインゲームに、ずっぱまりしたことが。
『ウルティマオンライン』が楽しすぎて盆休みの一週間、近所のコンビニに食料を買いに行く以外ずーっと、それこそ寝るのもその姿勢だから、1日23時間半パソコンの前にすわっていたら、休みの最終日に鏡を見て卒倒しそうになったそう。
その様は本人いわく「生ける屍」「遭難13日目」「クトゥルフ神話に出てくる邪神を見て発狂した人」というもので、どんだけやってたんや、と。
そんな彼も、一歩外へ出れば結構優秀な技術者なんだから、人生とはわからんもんです。「ゲームはよくない」という大人はいまだに多いけど、まあみんな、そこそこ普通の社会人になってますよ。
そんな話を、別口で後輩アサヒガオカ君にしてみると、
「わかりますわあ。自分も、就職するまでは平日学校帰りに6時間、土日は11時間ゲームやってたッス」
すごいもんだと言いたいけれど、まあゲームジャンキーでなくとも『ダービースタリオン』とかなら、ずーっとやってる人とかいたね。
「自分、だいぶ前っスけど先輩からケン・グリムウッドの『リプレイ』って小説、借りたやないですか?」
はいはい。主人公が人生を何回もやり直せるっていう「リプレイもの」の元祖になった大傑作ね。
「あれ、メッチャおもろかったんスけど、やっぱ考えてまいますよね。自分やったら、どうするやろう、て」
考えるねえ。あの本でも、人生やり直せてラッキーやけど、よかれと思ったことが裏目に出たり、子供とか慈しんだ存在がリセットされる切なさがあるんよね。
「あれは泣くッス。で、自分ならどうするか真剣に考えて出た結論がですね」
はいはい。気になるね。
「わかりやすく5回《リプレイ》できるとしたら、3回目くらいの人生は、丸々『ポケモン』に使い切りますね」。
そっかー、ポケモンはハマるらしいもんねえ……て、主人公が30年くらいゲームばっかやってる『リプレイ』じゃあ感動できないって!