『日常洋画劇場 映画のことはぜんぶTVで学んだ! 』を読む。
映画秘宝から出ているこのムックは、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)を主とした、
「テレビでやってた名もなきB級映画」
これへの深い愛と限りなきノスタルジーを、熱っぽく語るという内容。
私は世代的に「東京12チャンネル」というものになじみはないが(「テレビ大阪」、もしくは「Uチャン」)、経済成長に浮かれまくった日本が、
「おもしろくなければテレビじゃない」
なんてフカしていた時代に、この局が実に味のある独自路線をひた走っていたのは、だれもが知るところである。
中でもふれられているが、他局がゴールデンタイムに豪華なタレントを擁した派手な番組をやっている中、ここだけは『ハクション大魔王』の90分スペシャル(しかも再放送)を流していた。
テレビドラマ『やっぱり猫が好き』で、三谷幸喜さんが脚本を書いた『ブジラVS恩田三姉妹』は、怪獣ブジラがあらわれて日本を蹂躙するニュースを、恩田三姉妹がテレビをザッピングしながら追うという怪獣室内劇(!)だが、小林聡美さんが
「あれ、この局だけ時代劇やってる」
なんて苦笑いするというギャグにされたのも、テレビ東京であった。
そんな、愛さずにはいられない東京12チャンネルなだが、実のところ映画番組は他局に負けない充実ぶりを披露していた。
そこには制作者側の、かぎりない映画熱があった……。
わけかといえば、特にそんなこともなく、理由は単なる「ソフト不足」。
要するに、テレビ局はあれど、予算などの関係で「番組数が足りない」ということなのである。
そこで制作側が目をつけたのが映画。
これを買い付けてきて流せば、とりあえず2時間近くは埋めることができる。
というわけで、
「とにかく、あるもん全部持ってこい!」
とばかりに総力戦というか、どこで買い付けたのかよくわからないZ級ドラマや、有名映画1本に20本くらい付いてくる「抱き合わせ商品」など、有象無象わけのわからない作品が、山のようにたれ流されることとなったのだ。
その玉石混合ぶりは、タイトルを見てもわかろうというもので、『十戒』『大脱走』など、まともな映画を流すときもあれば、
『覗き魔バッド・ロナルド』
『ビースト/巨大イカの逆襲』
といった、どう見たって「王様のブランチ」では紹介されそうもないものも流れることに。
この手の映画はざっと並べるだけでも、
『人喰いシャーク・バミューダ魔の三角地帯』
『キラー・アーンツ/殺人蟻軍団・リゾートホテル大襲来』
『パニック・オブ・タランチュラ/殺人クモ軍団恐怖の大空輸!』
『ザ・ビーズ/殺人蜂大襲来、アメリカ大陸壊滅の日』
なんとも味のあるラインアップである。
本文でもつっこまれてたが、アンツでなく「アーンツ」なところに、制作側のこだわりが感じられる。
たかが蜂に、「アメリカ大陸壊滅」というのも、ハッタリがきいててナイスだ。
秋の夜長、映画といえば『シン・ゴジラ』のような話題作や『君の名は。』のような感動ものもいいが、男なら粋に
『ロックンロールレスリング少女vsアステカのミイラ男』
といった超弩級のスットコ作品も楽しんでみたいものだ。
(続く→こちら)