青山南『アメリカ短編小説興亡史』の影響で、本日はおススメのアメリカ文学を その2

2018年10月27日 | 

 青山南『アメリカ短編小説興亡史』を読む。

 前回(→こちら)は、サクサク読めて、アメリカ文学史も学べる本書を激プッシュしたが、今回は私自身が読んでおもしろかったアメリカの小説や、その他の本を紹介したい。



 猿谷要『ニューヨーク』



 アメリカの歴史入門といえば、この人の本ははずせない。

 日本と密接な関係というか、偽悪的にいえば「宗主国サマ」であるアメリカだが、ヨーロッパと中華編重の学校世界史では、意外とになってるのが米国史(今はどうなのかな?)。

 それを、読みやすく、また知性的な視点で語れる猿谷先生の著作は、まさに必読。

 このほかにも、

 

 『物語アメリカの歴史』

 『ハワイ王朝最後の女王』

 『アトランタ (世界の都市の物語)』

 『北米大陸に生きる』

 

 などなど、猿谷要にハズレなし!



 ☆柴田元幸『アメリカ文学のレッスン』



 ご存じ、人気翻訳家であり、エッセイストとしてもすばらしい仕事をこなす、柴田先生。

 現代文学のイメージが強いが、この本ではポーメルヴィルなど、定番の古典を解説。

 金原瑞人さん、岸本佐知子さん、鴻巣友季子さん等、翻訳家というのは文章自体も達者な人が多い。

 それはロシア語通訳でもある、米原万理さんの言うように



 「外国語で仕事をするのに大事なのは、日本語力」

 

 だからかもしれないが、ある意味作家以上に

 

 「どうすれば、わかりやすく伝わるか」

 

 これに腐心する作業をしているからではないか。

 ここでも、「文学」という一見かたくるしそうな材料を、まるで楽しい茶飲み話のように料理する、柴田先生の腕が見事。

 フォークナーなんて、全然知識も興味もなかったけど『アブサロム、アブサロム!』が無茶苦茶に読みたくなった。



 デイビッド・ハルバースタム『さらばヤンキース―運命のワールドシリーズ』


 1964年の大リーグでは、無敵の覇者であったニューヨークヤンキースが苦戦を強いられていた。

 主砲ミッキーマントルのおとろえや、チームの若返りの失敗。

 差別の歴史を乗り越え、新たな戦力となるはずだった、黒人選手へのかたくなな忌避の反応など、さまざまな「経年劣化」が原因だ。

 それでも、地べたをはうようにしてリーグを制したヤンキースだったが、ワールドシリーズでもセントルイスカージナルス相手に勝ちきれない。

 もつれたシリーズは、とうとう3勝3敗となり、ついに運命の最終戦に突入するが……。

 新しい時代を理解できず、またかたくなに拒否した「古き名門」が、その波に飲まれていく様を、硬派なジャーナリストでもあるハルバースタムが、静かに描いていく。

 平家物語ではないが、栄ゆくものもいつかは滅び、そしてその古きものはいつの時代も、かならず同じあやまちと、あがきをくり返す。

 題材は野球だが、これはスポーツにかぎらず、人間不変の真理を描いているところが、厚みとなっている。

 そう、「古き良き時代」をなつかしむ人は、その時に美化されがちな過去の幻影にしばられ、新しい波の中、その「良き記憶」に復讐される。

 それは、いつまでたっても変わらない、人という生物の「業」のようなものなのであろう。




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