『ウルトラマンA』に出てきたスチール星人はクールジャパンである。
オタク的な趣味というのが、世間に認知されて久しい。
アニメにマンガ、ゲームにフィギュア、鉄道にアイドルにミリタリーにと、その方向性は様々であるが、私の場合は特撮ものということになる。
そんな、『GOZILLA』やスピルバーグの『宇宙戦争』に『パシフィック・リム』などハリウッドもリスペクトする日本の怪獣文化だが、ゴモラやレッドキングといったメジャーどころがいる一方で、「なんやこれ?」と首をかしげたくなるような変な怪獣というのも存在する。
たとえば、『ウルトラマンA』に出てくるスチール星人。
よく怪獣や宇宙人には
「古代怪獣ゴモラ」
「宇宙忍者バルタン星人」
なんていうキャッチフレーズのようなものがつくが、このスチール星人のそれは、
「宇宙超人」
宇宙超人
なんだか、すごそうではないか。
そんな宇宙の超人たるスチール星人は、ある目的を持って地球へとやってくる。
星人の目的は何か。地球侵略? それとも人類滅亡?
なんと怖ろしいことか、おい貴様、地球になにをしに来た! と、問うならばスチール星人の目的というのが、
「パンダのぬいぐるみを盗みに来た」
へ? なんでパンダ?
理由はよくわからないが、とにかくパンダなのである。
劇中はっきりとは描かれていないが、どうも地球に来てみたら、
「なに、このパンダとかいのう、マジかわいいんだけどー」
てなことになったようだ。
ネパールあたりで、現地の民芸品にはまるOLさんみたいである。乙女か!
こうしてパンダに魅せられたスチール星人は地球上のパンダのぬいぐるみを次々と盗みだし、超獣攻撃部隊TACの必死の追跡にもかかわらず、姿をくらまし、その行方は知れず……。
……て、いやいや、TACもそんなことで出動するなよ! ただのぬいぐるみ泥棒だ。警察にまかせとけばどうなのか。
いわば、万引き犯を捕まえるのに自衛隊が出ていくようなものであるが、そうこうしているうちに、地球上からパンダのぬいぐるみが全部なくなってしまう。
だからどうしたというか、宇宙人が不法入国してきたわりにはたいした被害ではない気もするが、止まらないのがパンダマニア(?)のスチール星人。
愛が高じて、ついには本物のパンダまで盗み出そうとするが、今度こそウルトラマンAにつかまってしまう。
ついに御用かというところで、巨大化して最後の抵抗をするも、メタリウム光線でやっつけられたのであった。めでたしめでたし……。
……て、だからなぜそんなにパンダを推すのか。『パンダコパンダ』でも見たのであろうか。謎である。
つーか、そんなにほしいなら、トイザらスあたりで買えよ!
なんだかもう、解説するのもアホらしい宇宙人だが、このスチール星人の登場する回のサブタイトルが、
「パンダを返して!」
緊迫感があるのかないのか、計りかねるタイトルである。
まさに日本の「KAWAII」文化が宇宙レベルに達した瞬間と言えよう。クールジャパンもここに極まれりだ。
KAWAII大好きスチール星人
どうも、当時は日中国交回復によるパンダブームであったらしく、それに乗っかっただけというか、極めて安易な便乗商売であった。トホホのホである。
ちなみに、スチール星人はパンダを盗むときに、そのままの姿だと目立つので、人間に化けていたのだが、その時の姿がこれ。
これがパンダを盗みまくるって、怖すぎるだろ! 横溝正史原作の映画やないんやから。
(タロウ編に続く→こちら)