ワールズ・エンド 木之本桜が世界を救う!

2014年03月25日 | オタク・サブカル
 「なんやこれ! アメリカとブッシュ、マジゆるせねっすよ!」

 後輩シヅキ君と我が家で一杯やっていると、彼が突然そんなことを言いだしたのである。

 その原因は、たまたまつけていたテレビであった。

 当時、9.11への報復で、米軍によるアフガン空爆が行われており、その様子が報道されていたのだ。

 仮面ライダーや戦隊シリーズなどヒーロー番組をこよなく愛する熱血漢シキヅ君には、そのような乱暴狼藉が許せるはずもなく憤っている。

 私は焼酎を飲みながら、

 「アメリカってこういう《野蛮な○○(ナチとかアカとかイスラムとか)をぶんなぐって、民主主義で再教育する!》つーの好きやよなあ。日本も全然他人ごとちゃうけどさあ」。

 やっぱそれって、岸田秀先生が分析するところの「インディアン・コンプレックス」のせいなんかね。

 なんてボンヤリ見ていたが、正義の男シキヅ君は怒りがおさまらないのか、

 「なんで世界では戦争ばっかり起こるんや! 正義はどこにあるんや!」

 ひとしきり嘆くのだ。

 熱い男である。こういう男がいてくれると、我々もめんどくさ……もとい、日本の未来をまかせられるというものだ。

 こういうとき、人の反応はそれぞれで、映画ファンの友人サノ君は戦争と聞くと、いつもニュース番組に釘付けになる。

 それはもちろん、正義を愛する心ゆえ……ではなく、戦場の

 「特撮映像」

 をチェックするためである。

 戦車が、爆撃機が、兵士の持つ銃が、彼のマニア心をくすぐるのだ。

 以前、友人同士で鍋パーティーをやっていたとき、テレビでユーゴ内戦の映像が流れたことがあった。

 そこで皆が鍋の世話を焼く手を止めて、

 「なんてひどい……」

 「あたしたちにできることって、ないのかな……」
 
 なんて神妙になっているところで、彼一人ワインをパカパカ空けながら、

 「いやあ、セルビア軍のT-72戦車、超カッケーよな!」。

 なんて盛り上がっていたのには、

 「男の中の男や」

 大いに感心したものだ。

 女子への好感度を気にして、

 「でもボクは信じるよ、きっと人類は愚かさを克服できるってね」

 などと、大ウソぶっこきまくっていた私など、彼とくらべると、まだまだ修行が足りないと言えよう。

 もちろんのこと、シヅキ君にもそのような冗談(?)は通じないだろうから黙っていたけど、止める人もいないとなると、ますますヒートアップ。

 熱いねえ、と思わずコタツの設定温度を下げそうになったが、さらに友はやおらテーブルをドンと叩くと、こう叫んだ。

 「全世界が平和になる方法、オレ知ってるっすよ!」

 はあ?

 いきなりスケールのでかい宣言である。

 マハトマもビックリの世界平和宣言。そんな方法が簡単に見つかるなら人類も苦労はないというか、なにをいうとるんやこの男は。

 こちらの苦笑をよそに、友はさらに

 「こんな戦争、オレやったら、すぐに終わらせられます!」

 ええええええええ!!!!!

 泥沼のアフガン状勢に、突然の終戦宣言。

 この戦争を終わらせる。

 セリフはムチャクチャかっこいいけどさ。オマエは『幼年期の終り』に出てきたカレルレンかなんかか?

 ど……どうやれば、ええんでしょ?

 いきなりの展開にちょっと腰が引けた私が尋ねると、彼は焼酎をくいっとあおり、さらなる一撃をぶつけてきたのである。

 「それはね、全世界中の人間が『カードキャプターさくら』を見ればいいんですよ!」

 


 (続く【→こちら】)




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