第二外国語の選択はむずかしい。
というテーマで以前少し語ったが(→こちら)、私の場合はドイツ文学科に進学したので、これに関しては泣いてもわめいても「強制ドイツ語」。
前回は(→こちら)ホフマンの『黄金の壺』を紹介したが、今回も私をそんなマイナー街道へと導いた、罪深くもすばらしい作品の数々を紹介したい。
ハインリヒ・ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』
10代のころ、読書の手引きとして活用していたものに、早川の『ミステリ・ハンドブック』『SFハンドブック』と並んで、『青木 世界史講義の実況中継』があった。
河合塾の講師であった青木裕司先生の講義録で、「中国共産党の長征」について異様に熱く語ったり、戦時中のドイツや日本を激しく批判しながらも、スターリンについては、
「いろいろ間違いもやらかしたけど、まあおおむね評価してもいい人物ではないか」
みたいな甘々な評価を下していたり(いや「世界史」学んだら、とてもそうは思えませんでしたけどね……)、なにかこう
「わかりやすいなあ」
と笑ってしまう部分もあるが、読み物としてもおもしろいし、中でも「文化史編」は教養のガイドとして活用させてもらったもの。
そこでおススメされていたのが、『ドイツ古典哲学の本質』。
ハイネといえば
「情熱の詩人」
「愛を語るハイネのような」
といった歌詞に見られる、ロマンチストで熱い人と思われがちだが、実のところはかなりクールな実際家で、詩と同じくらい散文や評論方面でも評価が高い。
アマゾンのレビューで、小谷野敦さんが酷評(ちょっと「いちゃもん」ぽいけど)しているのが興味深いが、内容はといえばハイネがフランス人のためにドイツの哲学や神学を語るという、元はパンフレットのようなものだったらしい。
宗教改革とルターからはじまって、スピノザにレッシング、カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルといった、世界史の教科書でもおなじみの巨人たちを紹介していく。
ハイネの持ち味である平易な文体で語られるそれは、とにかく読みやすくて、それでいて格調高く、サクサク読んでいるうちにドイツ哲学史が頭に入ってくるというスグレものだ。
ただ、リーダビリティーが高い分、ひとつひとつのテーマに対する掘り下げはサラッとしていて、また取り上げる人選の偏りなど、「哲学書」を期待していた人には、やや物足りないかもしれない。
そう、この本は『哲学の本質』として読むと肩透かしかもしれないが、話のうまい先生による「楽しい入門編」としてだと、とたんに輝きを増す。
一言でいえば、「ハイネ ドイツ古典哲学講義の実況中継」。
「哲学なんて重くて難しそう」と敬遠している人に、池上彰先生の番組を見る感覚で、手に取ってもらいたい一冊。
個人的には、スピノザの汎神論についてのところが、日本にも応用効くのではとか思えて興味深かったです。
(続く→こちら)