「こんなもん、ただの萌え動画やないか!」
パソコンの前でさけびたくなったのは、ある将棋動画を観ていたときのことだった。
それが、第2回女流ABEMAトーナメント。
「女流棋戦を、もっと配信してほしいなあ」
いつもそう思っていた私としては、将棋ブームの今、こういう企画がどんどん出てくるのは、うれしいかぎりである。
そこでハマってしまったのが、まさについさっき、女流名人戦の挑戦権を獲得した伊藤沙恵女流三段率いる「チーム伊藤」の控室の様子。
対「チーム里見」戦で、トップバッターの石本さくら女流二段が戦っているときのこと、チームメイトの伊藤さんと室谷由紀女流三段(意外な組み合わせで、そこもいい)が、それを見守っている。
注目なのは、室谷さんが席をはずして、ひとりお留守番の伊藤さんのお姿。
そこで彼女はモニターで将棋を観戦しながら、お菓子を食べているのだが、本当に
「ただ食べているところ」
だけが、5分くらい流れるのだ。
ふんわりした雰囲気の伊藤さんが、無心におせんべいかなにかをボリボリかじる姿は、それはそれはキュートでございました。
私は美少女アニメやゲームにはうといが、なるほど、これが「萌え」というやつか。
ということで、今回はアベマでも大活躍な女流棋士の将棋を語ってみたい。
2017年、第28期女流王位戦の第2局。
里見香奈女流王位と、伊藤沙恵女流二段の一戦。
両者得意とする相振り飛車だが、ここで見せた伊藤の駒組が独特だった。
4筋にある飛車の射程をかわしての、▲58玉という形が、これぞ「伊藤流」の駒さばき。
個性的で楽しいだけでなく、私もたまに自分で指すと、なんかこんな形で戦うことが多いので、そこも個人的な親近感を感じるところ。
もっとも、さえピーは読みと構想力のたまもので、私の場合は
「単に駒組がヘタ」
という大きな違いがあるが、なんにしても、目を引く棋風であることは変わりはない。
実際、この将棋も「出雲のイナズマ」の激しい攻めを、ときに力強く、ときにのらくらとかわしながら、伊藤流の「ある作戦」で切り抜けるという大激戦になるのだから。
(続く→こちら)