加藤郁美『切手帖とピンセット』と金正日総書記の華麗なる肖像

2015年01月01日 | 
 元日早々、北朝鮮の切手がステキすぎる。

 そんな話がしたくなったのは、年末に読んでいた、加藤郁美『切手帖とピンセット』に触発されてのことである。

 かの国の切手が具体的にどうイカすのかは、後に画像で紹介するとして、まず本の話からすると、切手というと、趣味としては地味というか昭和の香りというか、なんとなくマニアックな印象を受ける。

 切手に興味のない私も昔は漠然とそう感じていたのであるが、海外旅行に行くようになり、家族や友人に絵はがきを送ったりしていると、それが多少変わってくるところがあった。

 切手は、意外とおもしろいぞ、と。

 この本はタイトルの通り、世界各国の切手の、特に1960年代のレトロなデザインのものを集めてオールカラーで紹介したもの。

 その地域はヨーロッパから南米、アジアなど幅広く、中にはソ連の宇宙開発や東ドイツの共産主義ボーイスカウト「ピオニール団」。

 さらにはまだ「地上の楽園」だったころの北朝鮮など、「そんな時代もありました」な歴史を感じさせる図柄もあったりして、ながめているだけでもなかなか楽しい。

 海外旅行において、絵はがきを選ぶのはひそかに心おどる作業である。

 以前、旅行雑誌の投稿欄に、

 「旅先から、気に入った絵はがきに『おかえりなさい』とだけ書いて、自宅の住所を書いて送ります。すると、一足先に日本について、わたしが帰ってくるのをポストで『おかえりなさい』と待ってくれているのです。それが旅の楽しみの一つです」

 みたいなことが書かれてあって、最初読んだときは、

 「なーにが『おかえり』だ、しゃらくさい。なんか、自意識過剰の自分大好き女のにおいがするぜ、なあ」

 なんてイヤ事をかましたりしていたが、いざ自分が旅に出て絵はがきを書くとなると、まあ「おかえり」はやらないにしても、自分宛に絵はがきというのは、悪くないアイデアであると感心したものだった。

 まず、絵はがきはおみやげにいい。

 安いしかさばらないし、ちょっとセンスのいい店を探せば、部屋に飾っておいても映えそうな、いい感じのデザインのものがけっこう見つかったりする。

 私のお気に入りは、パリの下町や路地裏をモノクロで撮った図の絵はがきで、古い映画が好きなもんで店の棚ごと買いたくなったりしたものだ。

 観光客向けのみやげ物屋で安物買いの銭失いするくらいなら、ずっと安上がりだし飾りでもある。なんといっても、家に送ってしまえば、他のみやげのように荷物にならないのがすばらしい。

 で、その絵はがきにおまけについてくるのが世界の切手。これが、なかなかあなどれない思い出の品になるのだ。

 王族の肖像画とか、世界史の教科書で読んだ歴史上の人物とか、俳優や女優などなどバリエーションが豊富。

 私がヨーロッパを旅したときは、ちょうどユーロ導入前夜で、ユーロ札か硬貨の記念切手みたいなものが人気だったが、そういうメモリアルな切手があると、自慢や話のタネになったりもする。

 わざわざコレクションしようとまでは思わないが、旅先や、友人が外国から絵はがきを送ってくれたときには、切手とともにありがたくアルバムに納めさせていただいている。

 そんな多種多彩な世界の切手だが、もっともナイスだと感じたのは、北朝鮮の切手。

 これは買ったのではなく、バックパッカー専門誌『旅行人』において、蔵前仁一編集長が紹介されていた。

 図柄は偉大なる将軍サマなのであるが、そのレイアウトがなんともイカスというか、論より証拠と言うことで、とりあえず見てください、コレ。



 



 どーんと、どうです、なかなかのインパクトでしょう。

 なんでも北朝鮮の白頭山に立つ将軍サマだそうだが、構図がすばらしすぎる。

 マントを風になびかせ、山の上でのこのヒーロー立ち。

 ぶわははははは! なんちゅうセンスや! こんなイメージが許されるのは、日本では水木一郎アニキか宮内洋くらいなもんや!

 ようやるわあ。だって、これ同じポーズを富士山の上で天皇陛下がやってたら、絶対おかしいやん!

 もう、あまりのインパクトに、最初見たときは10分くらい笑い続けました。ダッハッハ、腹いてえ!

 北朝鮮といえば、あのめまいがするようなマスゲームといい、怪獣映画『プルガサリ』の思わせぶりすぎる内容とか(だって正義の怪獣が「悪の独裁者」を倒すってストーリーなんだゼ)、この切手に象徴される将軍サマのずれたナルシシズムといい、どこまでも「どや」の方向性が迷子である。

 いやあ、何度見てもいい絵だなあ。

 それにしても、他のブログやツイッターが年賀状や初もうでの話で盛り上がっている中、ここの新年一発目は偉大なる将軍サマのカッケー画像。

 さすが私は2015年度も攻めの姿勢を忘れない。今年度もそのマイナーぶりにますますみがきがかかること必定のまさにロケットスタートであり、本年度もよろしくお願いいたします。



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