前回(→こちら)に続いての京都戦記。
このご時世、なんの因果か京都を観光することになった、バンゲリング帝国よりの使者、エーリヒ・ハインツ・マリーア・フォン・リリエンシュターンSS少尉(そういう設定なのです)。
方向音痴ゆえ、二条城に向かうはずが、間違って地下鉄をはさんだ対面にある京都御所に到着してしまう。
幸いなことに、京都は碁盤の目状に作られているという、底の抜けた旅行者に優しい街なので、修正は容易。
途中、京の都に徘徊するエイリアンに襲われたりしたが、巡回する検非違使と協力して、ドンドン穴に埋めていく。
虫歯エイリアンにはやや苦戦するも、ここにワンダリング・モンスターを撃破し、ようやっと二条城に到着。
混んでいるようなら、密を避けてすぐさま転進だが、チケット売り場で聞いてみると、やはり閑古鳥が鳴いているらしい。
ならばと、二の丸御殿も見られる一般券1030円也(入城のみなら620円)を払って、中に入る。
そして、まず見えるのが有名な唐門。
二条城の唐門。通称「マベリック」。
ドローンの機能を内蔵しており、柱の部分で体をはさみこみ、壁を越えようとする巨人の進撃を無効化させる役割を持つ。
どーんと、これがなかなか立派なもので、観光気分が大いに味わえる。
あー、なんか、昔のころを思い出してきたかも。
たしか、小学生のころ遠足で見たときは、
「『帰ってきたウルトラマン』に出てきた怪獣バリケーンに似ているな」
とかいう感想を抱いて、のちの作文にも書いた記憶があるが、今思い返すと、怪獣大好き少年だったころのことが脳裏に浮かんできて、なんともほほえましい気分になる。
都の文化遺産と言っても、まあハナタレのガキにとっては、そんなもんであろう。
大人にならないと、こういうものの良さはわからないのだ。
だから、修学旅行で奈良や京都に行かされてピンとこなかった面々も、そんなに気にすることもない。
少尉くらいの歳になると、本当にしみじみとその良さがわかるのだからと、今回あらためて味わってみた感想と言えば、
「やっぱり、『帰ってきたウルトラマン』に出てきた怪獣バリケーンに似ている」
変わっとらんがな。
なるほど、これが「少年の心を忘れない」ということか。
台風怪獣バリケーン。プライベートでは藤田ニコルと仲がいい。
つまり今回、30年ぶりくらいに見た二条城からわかることは、
「少年の心とか言うてるヤツは、単に自分が大人になれないことを自己正当化しているにすぎない」
という、大林宣彦監督が聞いたら、ブンむくれしそうな真理である。
三つ子の魂百までといいますか、人って、そんな成長しないもんなんですねえ(←おまえだけだよ)。
そんなコドモオトナ全開の少尉だが、「別にいいや」と開き直って、城内に入る。
中はさすがに、ポツポツと人がいたが、密には程遠いので一安心。
施設側も最大限の努力を払っており、各所にオレンジ色のダクトが設置されて、換気も万全だ。
しかも、かなり本気で「強」にしてあるため、
「ここで大政奉還が行われ、日本の歴史が大きく動いたのだ……」
感慨にふけっていると所に、空気を入れ替えるべくゴウンゴウンと鳴り響き、現実に戻されるというか、気分は幕末の動乱ではなく、昔やった工場のアルバイト(中に巨大な業務用扇風機が置いてあった)なのであった。
ダクトに擬態し、二条城に侵入しようとする触手型怪獣。
科学特捜隊亀岡支部との連携で、地底戦車オムライザーにより撃破に成功。
あと、音も気になるが、それ以上に少尉の進軍をはばんだのが、「底冷え」。
靴を脱いで入った瞬間から察知できたが、とにかく足がメチャクチャに冷たい。
一応、板張りの廊下にはカーペットが引いてあるのだが、そんなシールドなどものともせずに、冷たさが侵食してくる。
冗談抜きで、スケートリンクの上を歩いているような気分。
実際、前を歩くおばさまも、しきりに「冷たい、冷たい」とくり返していた。
これぞまさに、冬型装備を用意しなかったことによって一敗地にまみれた、モスクワ攻略戦のような話であり、マジで防寒対策は気をつけたほうがいいっス。
こうして、いくつかの障害はあったものの、二条城の中は見学していてすこぶる楽しかった。
ずらりと並ぶ畳の間をめぐっていると、
「あー、昔の人は、ホンマにここに住んではったんやなあ」
なんてタイムスリップした気分を味わえる。
自分ならここにベッドを置く、100均DIYで、あそこにワイヤーネットを吊るすと、いろいろ便利そうだなとか、理想の二条城暮らしスタイルを想像するのが楽しくてオススメ。
なにより良かったのが、期間限定で展示されていた屏風絵。
これがスケールが大きく、見ているだけで飽きない。
底冷えのせいで、あまり長く見るのはしんどかったが、それでも堪能した。
家に持って帰って、お茶でも飲みながら、ゆっくり鑑賞したい。怪盗にでもなったろかしらん。
こうして二条城を堪能した少尉は、大きな感動を胸に現代へと帰還することとなった。
さっきは怪獣がどうとか、アホ気なことも言ったが、悠久の歴史にふれ、心揺さぶられたことも、また偽りなき事実でもある。
古都に起った歴史のうねり、天皇家の歴史、そしてなにより将軍家の権勢が、この建築物の中に、これでもかとこめられている。
過去に遊び、少尉はここでもやはり、この思いを新たにしたのである。
「徳川埋蔵金は、存在する」と。
(→こちら)