沢木耕太郎『深夜特急』と「野良犬の自由」 ネパール旅行戦記2

2025年03月10日 | 海外旅行

 ネパールの国である。
 
 というのは前回語ったことで、そこいらでゴロゴロして平和なんだけど、たまーにだけど、ボロボロでやせた犬もいて、それがたぶん野良犬
 
 ということは、ふだん寝ているあの犬くんたちは「飼い犬」なのかなあ。よくわかんないけど。
 
 そういや沢木耕太郎さんの『深夜特急』で、貧相な野良犬を見てかわいそうと言うアメリカ老婦人が、自分のペットは専用のホテルに預けているというのを聞いて、
 
 


 「そんなんだったら、ここで野良犬をやっている方が、どれだけ幸せかわからない」



 
 
 なんて心の中で思うシーンがあるんだけど、あれイヤだったなあ。
 
 沢木さん的には
 
 
 「ペットなんかより、野良犬にシンパシーを抱くオレ、ワイルドハードボイルド
 
 
 てことが言いたいんでしょうが、その野良犬もそう思ってるかなんて、わかんないやん。
 
 もしかしたら、
 
 
 「えーなーペットは。飼い主にされて、メシにも不自由せーへんし」

 「そりゃ、束縛もあるっちゃあるけど、飢え死にする潜在的なストレス恐怖より、そっちの方がええんちゃうかなあ」
 
 
 くらいに思ってるかもしれない。
 
 それをなんか「野良犬カッコイイ」とかいう、こう言っちゃなんだがナルシステックな価値観に寄せて、勝手に決めつけるってのがなー。
 
 私は『深夜特急』を最低50回は読み返して、他の作品もほぼ全部読んでる大の沢木ファンだから、あえて書いちゃいますが、めっちゃダセーなーって感じちゃうんだよなー。
 
 野良幸せな犬もいれば、ペット幸せな犬もいるってことでねーの?

 野良だから「自由」で「幸せ」、飼われてるから「不自由」で「不幸」なんて類型的な考えこそ「不自由」の始まり。

 少なくとも私が野良犬の立場なら、
 
 
 「たしかに自分は自由かもしれないッス。ペットホテル窮屈なんでしょう」

 「でも、そのどっちが幸せかは、アンタでなくてオレ自身に決めさせてもらっていいッスか?」
 
 
 きっとそう「ワイルドでハードボイルド」を気取りたくなると思うんスよ。
 
 沢木さん自身がもしの立場でも、そうなんじゃないかなあ。

 そしてそれが、きっと本当に「自由」ってことだと思うのだ。
 
 

 

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