Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§33「審判」 カフカ, 1927.

2015-01-30 | Book Reviews
 1999年に公開された映画「Matrix」を彷彿させる作品。

 朝目覚めた時にいきなり逮捕されてしまう主人公ヨーゼフ・K。あり得ないはずの現実に毅然として抗おうとしながらも、依然として逮捕の理由が明らかにされぬまま、置かれた環境や状況、周囲の動揺等から何らかの罪を犯したことに間違いないと周囲が認知していくにつれて、自らもそう認知せざるを得ず、徐々に追い込まれていく主人公ヨーゼフ・K。

 作品の終盤で綴られる説話「掟の門」において、自由に歩いていた人がその門の前に足を止めて入ろうと思ったこと。今、門に入ることを許さないが、入りたいのであれば入ってみればよいと囁く門番。その門の先には幾つもの門が控え、もっと力をもつ門番が待ち構えていること。入ろうと思えば入れるはずだが、命有る限り門番の前で待ち続ける人。

 予期せぬ偶然の一致がもたらした状況において行動した結果、何が引き起こされるかが認知できないことで自由を放棄せざるを得ないことを示唆しているような気がします。

初稿 2015/01/30
校正 2021/01/08
写真 聖ヴィート大聖堂
撮影 2001/09/11(チェコ・プラハ)