Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§49「翔ぶが如く」(大久保利通) 司馬遼太郎, 1980.

2016-03-16 | Book Reviews
 西郷隆盛とは幼馴染み、彼が黙して語らず英雄視されたこととは対称的に、大久保利通は多くは語らないものの、自らが英雄視されるのではなく、英雄像を創りだしたのかもしれません。

 分析心理学における元型(アーキタイプ)として英雄を捉えた場合、錦の御旗は日本人が古来から抱く絶対不可侵の英雄像をイメージさせ、攘夷という狂気としての集合的無意識をある方向に導く言わば作用点。

 逆に言えば、近づき難く侵し難い英雄像を創りだすことは、誰であろうとも英雄になることは能わず、言い換えると莫大なエネルギーを潜む集合的無意識を勝手に行使させない為のフェールセーフ機能なのかもしれません。。

 それが、大久保利通が後進に引き継いだ偉業の核心のような気がします。

初稿 2016/03/16
校正 2020/12/16
写真 皇居正門石橋
撮影 2012/09/30(東京・皇居)