Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§67「対話する人間」 河合隼雄, 2001.

2017-03-17 | Book Reviews
 アメリカの心理学者メラビアン氏が提唱したコミュニケーションの三要素は言語、聴覚、視覚。解釈の余地が無いメッセージは言語のみでも100%伝達できる一方で、解釈の余地が有るメッセージは言語だけでは7%しか伝達できず、聴覚が38%、視覚が55%を占めるとのこと。

 そもそも、聴覚や視覚で認知された純粋経験を自らの知識や経験に基づき言語として認識して統合する機能と自らの無意識に潜んだ言語では表現することが困難なコンプレックスとしての影を抑制する機能も併せ持つのが「自我」なのかもしれません。そういった「自我」が有るが故に、たとえ親子であっても、決して100%はわかりあえることができないのかもしれません。

 とはいえ、親が子供にとって良かれと意識したメッセージは、親にとって解釈の余地が無いからこそ言語としての指示や命令に他ならず、一方で、親が子供の成長を促そうと意識したメッセージは自らでさえも解釈の余地が有るからこそ、言語だけでなく聴覚や視覚の助けが要るような気がします。

 でも、その場に居合わせて沈黙だけが続いたとしても、その場に居合わせるだけでほんの少しだけわかりあえるのかもしれません。ひょっとしたら、それが配慮や共感への最初の一歩のような気がします。

初稿 2017/03/17
校正 2020/11/19
写真 寄り添う姉と身を寄せる妹
「姉妹」中村晋也 作
撮影 2016/05/23(大阪・御堂筋彫刻ストリート)