Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α14「ルーヴル美術館展」 京都市美術館, 2015.

2021-03-20 | Exhibition Reviews
 西洋絵画において、往時の日常生活を伺い知ることができる絵画を風俗画(ジャンル画)と言うそうです。

 ジャンル(genre)とは、種族や血統を意味するフランス語に由来するそうですが、当時の絵画区分において、歴史画、肖像画、動物画、風景画、静物画の順に序列がなされ、その序列に属さない絵画をジャンル画と呼ぶようになったそうです。

 ところで、絵画の序列に君臨することになった歴史画は、その寓意的な構成によって描く物語のなかになんらかの宗教的価値観を示唆しているような気がします。

 初来日となったフェルメールの「天文学者」。深緑の和服を羽織る学者が手を広げた先の地球儀に観る者の焦点が絞り込まれます。

 ひょっとしたら、地球儀はテクノロジーの暗喩、深緑の和服は東洋への交易の暗喩かも知れず、世界的規模で広がる資本主義的価値観を示唆しているような気がします。

 真の芸術作品とは序列の枠に留まらず、観る者の想像力を掻き立てる存在なのかもしれません。

初稿 2021/03/20
校正 2022/02/10
写真 ルーヴル美術館展「日常を描く 風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄」図録~「天文学者」Johannes Vermeer, 1632~1675
期間 2015/06/16~2015/09/27
(京都・京都市美術館)