Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§145「星の王子さま」 サン=テグジュペリ, 1943.

2022-04-08 | Book Reviews
 「この本は、昔子どもだったころのその人に、ささげるということにしたい。おとなだって、はじめはみんな子どもだったのだから」(p.5)

 砂漠に不時着した飛行機乗りの少年と星からやってきた王子さまとの出逢いを綴った物語。
 
 その王子さまが地球に来る前に訪れた六つの星それぞれには、たった一人の大人だけが棲んでいて、たった一人にも関わらず、誰かからどう思われるかであったり、誰かに競り勝とうとしたり、自らの役割だけを頑なに守ろうとしていました。

 ひょっとしたら、その王子さまの視点は、わたしたち大人一人ひとりがいつのまにか気づかずに身につけてしまった世界観を示唆しているのかもしれません。

「こうして今見えているものも、表面の部分でしかないんだ。いちばん大事なものは、目には見えない」(p.117)

 ファンタジーや童話に過ぎないと言えばそれまでかもしれませんが、世界とは自らが創るものであり、その為には自分だけの秘密の物語が必要なような気がします。

初稿 2022/04/08
写真 中秋の名月
撮影 2015/09/27(兵庫・西宮)