Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α16A「ジル」 朝倉響子, 1988.

2022-12-17 | Exhibition Reviews
 大学三年生になる長女とアーディゾン美術館からの帰り道、偶然めぐり逢った彫刻に思わずつぶやきました。

「あっ、大阪の御堂筋で見た『ジル』だ!」

 「Jill」という英語のスペルは女の子を意味するそうで、椅子につま先立って腰掛けるその彼女の姿は、なにかしらかの不安感と緊張感を漂わせつつも、誰かを待ちわびているのか、はたまた、なにかを判断しようとしているのかは分からないものの、なぜかしら凛とした印象を抱かせてくれるようです。

 ところで、なぜそう思うのかを考えると、その像のモデルとなった人がそうであったかもしれませんが、御堂筋で見た「ジル」も同じように思いました。

 ひょっとしたら、作者が彫刻によってなんらかの物語をその像に投影することで、観る人は無限の言葉から意味を選んで、眼の前に在る彼女の物語がそうであれ、そうでないとしても、自ずから分かる物語を存在させているのかもしれません。

初稿 2022/12/17
写真「ジル」 朝倉響子, 1988.
撮影 2022/07/10(東京・日本橋)
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写真「ジル」朝倉響子, 1993.
撮影 2015/03/21(大阪・御堂筋彫刻ストリート)