Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α20A「マリ」朝倉響子, 1984.

2023-02-04 | Exhibition Reviews
 東京都庁を堂々と望み、自信に満ち溢れた姿が印象的な「マリ」。

 朝倉響子が創り出した作品達は、そのモデルが誰であろうとも、観る人それぞれが自ずから分かる何かを物語らせてくれるような気がします。

 〈わたし〉らしさとは何かと考えはじめた少女の頃、その自我の芽生え※1からいつのまにか、将来のあるべき〈わたし〉を追い求めようとするなかで、ふと気づいたありのままの〈わたし〉※2

 そして、ありのままの〈わたし〉との対話※3や、あるがままの〈わたし〉※4との別離や覚悟を経て、迷いや不安を拭い去った、然るべき〈わたし〉なるものが「マリ」の姿に現れているような気がします。

 "わたしを〈わたし〉たらしめるのは〈わたし〉だけ"

ひょっとしたら、固く結んだ彼女の唇から、そう伝えようとしているのかもしれません。

初稿 2023/02/04
校正 2024/01/05
写真「Mari」朝倉響子, 1984.
注釈
※1)α16A「ジル」, 1988.
※2)α17A「フィオーナとアリアン」, 1992.
※3)α18A「マリとシェリー」, 1990.
※4)α19A「マリとキャシー」, 1989.
撮影 2022/12/11(東京・西新宿)