Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

α39E「Jill」朝倉響子,  1991.

2023-08-13 | Exhibition Reviews
 朝倉響子の作品には同じ名をつけたものが幾つかありますが、「ジル」もそのひとつ。

 日本橋と御堂筋で観た「ジル」※1は、つま先を立てながら椅子に腰を掛けた姿は同じであっても、両手の指の絡ませ方や表情から不安や戸惑う印象を与えるのもまた成長の一過程を示唆しているのかもしれません。

 ところで、結果には必ず原因があるはずという因果性の考え方に"とらわれ"てしまうと、その原因を回避しようと"はからう"のかもしれません。

 でも、その原因は一つであるとは限らず、しかも、その原因が過去の出来事であれば変えようもなく、なにかをきっかけに呼び起こされてしまうような気がします。

 ひょっとしたら、身の丈いっぱいに立ち上がった眼前の「Jill」は、因果性にとらわれない"あるがまま"の〈わたし〉を示唆しているのかもしれません。

初稿 2023/08/13
写真「Jill」朝倉響子, 1991.
撮影 2023/02/05(東京・多摩)
注釈 ※1)α36E「ジル」朝倉響子, 1993., α16A「ジル」 朝倉響子, 1988.