Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§83「もうひとつの成人式」

2024-01-28 | Liner Notes
 少し前の話ですが、大学二年生の長男は思うところがあってか成人式には行かないとのこと。

 サッカー一筋で頑張ってきたものの、大学ではサッカーをやらず居心地のよい自由と裏腹に孤独な時間を過ごしているのかもしれず、久しぶりに会える同級生に誇れるものがなかったからなのかもしれません。

 学ぶつもりがなければ、大学なんて辞めてもいいよと言うと、そもそも学ぶとはなにかが分からないと言う始末。でも、放っておいてほしいと言いながらも、どこかしらちゃんと僕をみてほしいという気持ちがみえ隠れするようにも感じます。

 親にとって子供達はかけがえのない存在だからこそ、ちょっとした心配から口を挟んでしまいがち。でも、親が口を挟めば挟むほど大きな不安に駆られ、子供の成長や可能性を阻んでしまうのかもしれません。

「やりたいことがぼんやりと分かってきたのなら具体的な人生設計をしよう。そして必要な考え方や手段をちゃんと学ぼう。君はかけがえのない存在だから惜しみなく支えるので遠慮なく相談してほしい」

 まわりからどう思われようと、ありのままの自分を大切にすることができれば、きっと交わる人も大切にできるし、いつしか納得できる道を歩めると思います。

 親子水入らずでそんな話をした後の彼の言葉を聞くと、これもまたもうひとつの成人式だったような気がします。

「やっぱり、成人式には行かないよ。だって、たったいま成人式が済んだばかりだから」

初稿 2024/01/28
写真「SUMMER」朝倉響子, 1984.
撮影 2022/12/17(東京・墨田川テラス)


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