ゆうべのこと。
「しんぐさーん!あと10分でお風呂沸くよー」と、宿の主人が声をかけてくれた。
お風呂がないということも考えて、昼間にひだか高原荘で温泉に入って来たのだが、お風呂があれば入るのである。
あと10分で沸くよーと言われたので、10分タイマーをかけて、10分後に五右衛門風呂のある小屋へと向かう。
中は真っ暗。電気、電気、電気はどこだ?
あった!スィッチをパチリ。・・・点かないじゃん。
宿の主人に言うのなんなんで、部屋に戻り、自分のライトを持っていく。
そんなことをしていたせいかどうかは知らないが、五右衛門風呂のお湯を触ると、「あちーーー!熱湯か?」くらい熱い。
水で埋める。スノコで混ぜる。そうすること10分。ははは。相当な量の水が入った。湯加減が難しい。五右衛門風呂の醍醐味。
湯気と煙がすごいので、小屋のドアを開け放つ。
無論、人が通れば丸見えである。まぁ、いいのである。
いやしかし、屋根があるので星は見えない。星は見えないが、お風呂は最高。
のぼせては冷まし、のぼせては冷まし、のぼせては冷まし。
一時間半ほどお風呂に入っていた。このまま朝までいけるんじゃないかと思ったが、キリがないので止めておいた。
やることのない麓郷の夜が、五右衛門風呂によって埋められた。
「いいねぇ、ここの宿。いいねぇ、五右衛門風呂」
外に出ると、雨がザザザーと降っていた。