僕の愛車は、ホンダのVtwinマグナという名の250ccのバイクで、その名はマグナちゃん。
初めて買ったバイクは、ホンダのGBクラブマンという名のバイク。19歳の時。車を持っていなかった頃。バイクしか持ってないから、いつもバイクに乗っていた。バイクにしか乗っていなかった。単気筒のエンジンをポコポコいわせて、そこら中を走り回ったものだ。
そのうち車を手に入れて、あまり、バイクには乗らなくなった。
乗らなくなったバイクというのは、乗ろうと思った時には動かない。動かないバイクには乗れない。乗れないからもっと乗らなくなって・・・しまいには埃を被った鉄クズのような存在になってしまう。
クラブマンの最期は、まさに、埃を被った鉄クズだった。
19歳の時に手に入れた宝物のオートバイは、大人になったら鉄クズに変わってしまった。
鉄クズに変わったクラブマンと入れ替わりにやって来たのが、マグナちゃんだった。
バイク屋で見せられたパソコンの画面で、「これ!買う」と、現物も見ぬまま手に入れたマグナちゃん。
我が家にやって来たマグナちゃんのボディには、spirits of phoenixという文字と、不死鳥の翼が描いてあった。不死鳥の魂。
クラブマンとサヨナラをする時に、僕は誓ったのである。
「マグナちゃんを死ぬほど大事にする」
そして、僕は「旅人」になった。
それからの僕が考えることのほとんどは、積載と防寒のことになった。
何ヶ月も旅をする荷物をマグナちゃんに積む方法、どんな寒さの中でもマグナちゃんに跨って走り続けられる方法。
北海道、東北、関東、北陸、東海、関西、四国。回りに回った。走りに走った。
特に、北海道と石巻と京都と伊勢神宮には、何回も行った。
一年の半分以上、旅をしていた年もあった。ほとんど家にはいない、そんな年もあった。
何日か前、僕は家の中をゴソゴソと探し物をして回っていた。
「あれぇ・・・どこにあんのかなぁ?マグナちゃんの書類・・・」
いよいよである。いよいよなのである。
北海道へと向かう道、関越自動車道で僕とマグナちゃんは空を飛んだ。去年の八月の終わり。
僕の最後の記憶は、群馬県から新潟県へ抜ける関越トンネルを抜けたあとの下の長い坂道。マグナちゃんのハンドルを握りしめて走っていた。僕の記憶はそこまで。
そのあと数10キロ走った後で空を飛ぶのだが、僕の記憶は、その数十分前で遮断されている。今も遮断されたままだ。
その時以来の再会、である。
一年と一ヶ月、もう長いこと会っていない。
その時以来の、再会なのである。
五年半、肌身離れず過ごしてきて、一年と一ヶ月。
季節はもうすぐ冬。
普通のライダーにとって、バイクの季節はもう終わる。気持ちの良い季節はもう終わりだ。
僕とマグナちゃんの季節は、いつもこの季節から始まる。ピーンと張り詰めた空気を切り裂きながら走るのが気持ちいい。
北海道なら、あとひと月くらい走れる。
京都の紅葉は、あとふた月も先だ。
雪が降らない限り、どこまでも走れる。
冬のバイクは気持ちいい。
マグナちゃんの書類が見つかった。これを持ってバイク屋の倉庫で眠るマグナちゃんに逢いにいく。
「さよなら」と、「ありがとう」を告げに、マグナちゃんに逢いにいく。
初めて買ったバイクは、ホンダのGBクラブマンという名のバイク。19歳の時。車を持っていなかった頃。バイクしか持ってないから、いつもバイクに乗っていた。バイクにしか乗っていなかった。単気筒のエンジンをポコポコいわせて、そこら中を走り回ったものだ。
そのうち車を手に入れて、あまり、バイクには乗らなくなった。
乗らなくなったバイクというのは、乗ろうと思った時には動かない。動かないバイクには乗れない。乗れないからもっと乗らなくなって・・・しまいには埃を被った鉄クズのような存在になってしまう。
クラブマンの最期は、まさに、埃を被った鉄クズだった。
19歳の時に手に入れた宝物のオートバイは、大人になったら鉄クズに変わってしまった。
鉄クズに変わったクラブマンと入れ替わりにやって来たのが、マグナちゃんだった。
バイク屋で見せられたパソコンの画面で、「これ!買う」と、現物も見ぬまま手に入れたマグナちゃん。
我が家にやって来たマグナちゃんのボディには、spirits of phoenixという文字と、不死鳥の翼が描いてあった。不死鳥の魂。
クラブマンとサヨナラをする時に、僕は誓ったのである。
「マグナちゃんを死ぬほど大事にする」
そして、僕は「旅人」になった。
それからの僕が考えることのほとんどは、積載と防寒のことになった。
何ヶ月も旅をする荷物をマグナちゃんに積む方法、どんな寒さの中でもマグナちゃんに跨って走り続けられる方法。
北海道、東北、関東、北陸、東海、関西、四国。回りに回った。走りに走った。
特に、北海道と石巻と京都と伊勢神宮には、何回も行った。
一年の半分以上、旅をしていた年もあった。ほとんど家にはいない、そんな年もあった。
何日か前、僕は家の中をゴソゴソと探し物をして回っていた。
「あれぇ・・・どこにあんのかなぁ?マグナちゃんの書類・・・」
いよいよである。いよいよなのである。
北海道へと向かう道、関越自動車道で僕とマグナちゃんは空を飛んだ。去年の八月の終わり。
僕の最後の記憶は、群馬県から新潟県へ抜ける関越トンネルを抜けたあとの下の長い坂道。マグナちゃんのハンドルを握りしめて走っていた。僕の記憶はそこまで。
そのあと数10キロ走った後で空を飛ぶのだが、僕の記憶は、その数十分前で遮断されている。今も遮断されたままだ。
その時以来の再会、である。
一年と一ヶ月、もう長いこと会っていない。
その時以来の、再会なのである。
五年半、肌身離れず過ごしてきて、一年と一ヶ月。
季節はもうすぐ冬。
普通のライダーにとって、バイクの季節はもう終わる。気持ちの良い季節はもう終わりだ。
僕とマグナちゃんの季節は、いつもこの季節から始まる。ピーンと張り詰めた空気を切り裂きながら走るのが気持ちいい。
北海道なら、あとひと月くらい走れる。
京都の紅葉は、あとふた月も先だ。
雪が降らない限り、どこまでも走れる。
冬のバイクは気持ちいい。
マグナちゃんの書類が見つかった。これを持ってバイク屋の倉庫で眠るマグナちゃんに逢いにいく。
「さよなら」と、「ありがとう」を告げに、マグナちゃんに逢いにいく。