僕が、凄い人を探して旅をしているという話は、前に書いた。
なぜ凄い人を探して旅をしているのかも、前に書いた。
ザンカさんは、間違いなく凄き人である。
前にザンカさんが言った。
「ウトロから斜里に向かう道の左側に黄色い建物があるんだけど、見たことない?」
僕は黄色い建物の記憶はなかったし、ザンカさんが言ったその言葉も、すっかり忘れていた。
ちょつどひと月ほど前、羅臼を出てウトロを通って、和琴半島へ向かった。
ウトロから斜里へと続く一本道。左側に黄色い建物が見えた。通り過ぎてから思った。
「あっ!あっ!黄色いの!あっ!ザンカさんの!」
バイクをUターンさせて停めた。
廃墟である。黄色い廃墟の建物である。
「おぉぉ、これかぁ」
記憶が蘇る。
伸び放題に伸びた草。
僕は草をかき分けて廃墟へと向かう。