昨年、昭和の歴史三部作として公演が行われた李香蘭を、改めて観てきました。
戦争の悲劇を思い知らされ、出来ることならば目を背けたいとと言う思いと、忘れてはいけない記憶であるという、複雑な思いを抱きました。
今回の公演を改めて観るかどうか悩んでいましたが、キャストを見て思わず足を運んでしまいました。
アンサンブルの方々以外は、ほぼ前回公演と変わらぬキャストながら、裁判長にオペラ座の怪人を演じている高井さんが久しぶりに出演されているためです。
昨年は種井さんが演じていて、私の友人たちの間では、密かに出演されることを望む声があがっていましたが、実現することなく終わりました。
今年もそんな思いが聞こえてきた頃、今回のキャストを知りました。
さらに、李愛蓮役に秋さんがキャスとされたことに、大きく驚かされました。
愛蓮というと、五藤さんのイメージが固まっていたため、キャス変自体が驚きでした。
秋さんならば、歌も芯の強さもイメージを崩すことはないと思う反面、中国出身の彼女が愛蓮という役を理解して演じること自体、複雑な思いを乗り越えてのものだと想像出来るからです。
四季には秋さん以外にも、多くの中国、韓国出身の役者さんがいらっしゃいますが、役を演ずる以上に多くの時間を要したのではないでしょうか?
そんなことを考えているうちに、舞台の幕が上がりました。
冒頭の香蘭を囲む群衆のシーン、前回も怒りや憎しみ、悲しみの表情をした群衆が印象的でしたが、それ以上に山本さんの表情が凄かったです。
裁判長として登場した高井さんですが、種井さんのどっしりとしたイメージと比較すると線の細さを感じますが、声を聴くと大きな存在感を感じさせられます。
野村さんの香蘭、年齢的なものよりも歌声という点で、厳しさを感じさせられます。
立ち居振る舞いや感情表現は、私ごときが言うべきものはないのですが、歌姫と呼ばれた香蘭の歌。
聴いていて、大丈夫かなと思う場面が。
テープと解る2幕冒頭の歌声、やはりしっかり歌い上げて欲しいと思うのは、私だけではないのでは。
もっとも、多くの群衆の憎しみを受けながら孤独な闘いを強いられる裁判で、身体の中から込み上げる思いを絞り出すようかのように歌う2つの祖国は、聴いていて涙が出てきました。
Song & Danceで早水さんが歌い上げてくれた素晴らしい歌声とは異なる、苦悩に満ちた叫びにも似たものを感じました。
祖国のために闘いを続けた愛蓮が、裁判所で妹のような香蘭を日本人として救うシーンも印象的です。
玉林が日本人によって殺された事を知り、涙を流しながしていた表情が忘れられません。
線が細いと感じた高井さんの裁判長が歌う以徳報怨は、心に響きますね。
観に来た甲斐がありました。
そう言えば、2幕月月火水木金金でのアクロバティックなシーンですが、美しい伸身宙返り?で拍手が上がったのは驚きました。
前回公演を観たときとは、多くの場面で新しい発見をした気がした、今回の李香蘭でした。
四季劇場[秋] | 2009年6月7日 |
李香蘭 | 野村玲子 |
川島芳子 | 濱田めぐみ |
李愛蓮 | 秋 夢子 |
杉本 | 芝 清道 |
王玉林 | 青山祐士 |
【男性アンサンブル】 | |
高橋是清/海軍大将 | 維田修二 |
山口文雄/斉藤孝雄 | 山口嘉三 |
李将軍/参謀/丸の内警察署長 | 青木 朗 |
参謀/関東軍中佐 | 岡本隆生 |
検察官/参謀 | 川地啓友 |
弁護官/連合艦隊通信員 | 林 和男 |
裁判長/参謀 | 高井 治 |
奉天放送局員/新聞記者/負傷兵 | 中村 伝 |
検察官/新聞記者 | 川原信弘 |
溥儀 | 星野光一 |
参謀/関東軍少佐 | 深水彰彦 |
永井荷風 | 川口啓史(劇団俳優座) |
伝令兵 | 藤山大祐 |
青年将校 | 渡久山 慶 |
リットン卿 | 田島康成(劇団昴) |
検察官/参謀 | 池田英治 |
青年将校 | 村中弘和 |
平田郁夫 | |
朝隈濯朗 | |
川野 翔 | |
花沢 翼 | |
半谷 諒 | |
上廻玲雄奈 | |
文永 傑 | |
【女性アンサンブル】 | |
山口夫人 | 大橋伸予 |
李夫人/声楽教師 | 佐和由梨 |
小松陽子 | |
山本貴永 | |
王 クン | |
勝又彩子 | |
桜 小雪 | |
高橋佳織 | |
長橋礼佳 | |
江部麻由子 | |
暁 爽子 | |
山本彩子 | |
コンダクター | ー |