e+の企画で、観劇後のバックステージツアーに参加してきました。
参加者は、30人ほどでした。
終演後、観客が退場するのを待って、客席正面入口脇に設置してある扉を開け、鳥屋口(とやぐち)からスタートです。
【鳥屋(とや)】
花道へ繋がる部分で、花道との仕切りには揚幕(あげまく)が設置されています。
揚幕は、金属のパイプに金属のリングで吊られています。
揚幕の脇には小さな小窓が設置され、花道の状況を確認しながらスタッフさんが手動で開け閉めしています。
小窓の右下には、花道用のフットライトのコントローラも設置されています。
鳥屋の左手には、拵え場(こしらえば)と呼ばれる畳1.5畳分ほどのスペースがあり、照明のついた鏡台が用意されています。
小さな畳が3畳に見えたのですが、よく見ると畳表が貼られているようです。
歌舞伎を特集した番組などで何度か見た場所なので、1人興奮してしまいました。
鏡獅子などの早変えの際に、化粧や衣装を変えるそうです。
入口脇には、花道下へ続く通路が設置されています。
揚幕には、雪月花と呼ばれる、演舞場の座紋が白く染め抜かれています。
歌舞伎座では、鳳凰丸が染め抜かれているそうです。
揚幕の金属パイプには拳骨と呼ばれる留め具があり、ここにリングをぶつけて音を立てているそうです。
役者の「はい!」と言うきっかけに合わせて、開けるそうです。
役者によってタイミングが異なるため気を遣うそうで、説明をしてくださった方には海老蔵さんが一番難しいそうです。
演目によって、激しかったり、軽快だったり、あるいは音を立てずにと、様々だそうです。
今回の一条大蔵譚では軽快に、二人椀久ではバレないようにあけているそうです。
開ける場合は、手首のスナップをきかせて一気に開け、締める場合は、体毎飛び込むように締めていました。
実際に、体験もさせてもらえました。
それなりに拳骨にぶつかって音が出ますが、実際の舞台で聴く音とは大分違うのでしょうね。
【花道】
役者の気分でとの説明があり、花道を歩いてみました。
実際に立ってみると、思っていた以上に狭いです。
さらに、クッションが有るわけではないのでしょうが、パレット構造の檜の床のためか、そんな感じがします。飛び六方など、力強く踏み込むためのクッションにもなっているのでしょうか?
七三(しちさん)と呼ばれる位置(鳥屋と舞台の間の七対三の位置で、客席のどの位置からも見栄え良く見える位置だそうです)に切り欠きがあり、すっぽんと呼ばれる機構が設置されています。
ここには、花道下に通じるセリがあり、お化け、妖怪、獣の類が登退場する場所だそうです。
セリは2台有り、別々の動かすことができるそうです。
ちなみに、こちらではセリを別々に動かすことを、「ちゃんちき」と呼んでいるそうです。
すっぽんの語源は、生き物のスッポンの首の動きからだそうです。
【舞台】
花道から客席に戻り、舞台機構の解説です。
上手下手の大きな柱を、大臣柱と呼ぶそうです。
大臣の中には、鳴り物や謡いの方々のスペースが設置されています。
上手に二層のものは、チョボと呼ばれるものです。
下手は、黒御簾と呼ばれるものです。
セリには1号セリから10号セリまで、9つのセリがあるそうです。
※5号セリは、なぜか存在しないそうです。
操作盤担当の方が、実際に盆(14m?16m?)とセリを作動させて、動きを見せていただきました。
セリは、最大6尺(1.8m)上がるそうです。
見学時は幾つかが纏められていたようで、6台の大きさの異なるセリの動きが見られました。
【セリ】
舞台上に上がり、見学者全員と劇場スタッフさんが一番大きなセリに乗り、最大の6尺まで上がりました。
ここからの客席はなかなかの眺めで、プライドロックもこんな感じなんでしょうね。
昇降時は若干ぐらつくので、慣れないと怖い感じもあるのでは?
見上げると吊り物があり、こちらは総て手動で操作しているそうです。
さらに、盆が回転して、ほんの少しだけ役者気分になれました。
次に、奈落へ。
参加者の方が、「生きながらにして、奈落の底に行けるのね。」などと話していたのに、笑ってしまいました。
途中、客席側に中奈落と呼ばれるスペースがあり、役者さんの移動もあるそうです。
舞台から6.6mあり、奈落の底から見上げると、かなりの深さを実感します。
舞台セットも、このセリを使って移動しているものもあるそうです。
歌舞伎座の奈落は、もっと深いそうです。
下手側に移動してセリが戻るのを見ながら、花道下へ移動です。
【スッポン】
階段を上がり、中奈落のある位置から花道下を歩くと、スッポンの機構が見られました。
2台のセリの脇に狭いスペースがあり、伽蘿先代萩(めいぼくせんだいはぎ)でネズミが隠れるスペースがありました。
反対側には、煙を出したりするスタッフが入るスペースがあります。
これで、ツアーは終了となりました。
質疑応答ということで、こんな話が解説されました。
檜の舞台は掃き掃除しかせず、磨いたり拭いたりはしないそうです。
拭いたりすると、板が柔らかくなってしまうためだそうです。
状況に応じて、鉋で削ったりすることもあるそうです。
意外にもササクレがたくさんあり、裸足で歩くのは危険だそうです。
板の色は、白すぎると世話物などでは味気なくなるそうです。
場合によっては、汚しをかけたりすることもあるそうです。
舞台設計は、総て尺貫法で設計されていて、新しい歌舞伎座も同様だそうです。
床の厚さは、35mmだそうです。
楽屋は、舞台裏にあるそうです。
四季のバックステージツアーと違い、貴重な体験でした。
歌舞伎という環境のお陰で、その場では判らなかった用語や漢字もWebで調べる事ができたのも理解をする上で参考になりました。
歌舞伎辞典
三月花形歌舞伎 夜の部
一条大蔵譚
檜垣
奥殿
一条大蔵卿 市川染五郎
吉岡鬼次郎 尾上松緑
お京 中村壱太郎
鳴瀬 上村吉弥
八剣勘解由 松本錦吾
常盤御前 中村芝雀
二人椀久
椀屋九兵衛 市川染五郎
松山太夫 尾上菊之助