現在、世田谷パブリックシアターで、笹本玲奈さん主演で上演されているものです。
ジャンヌと言うと、ジャン・アヌイの「ひばり」を思い浮かべる方も多いのではないかと思います。
こちらのジャンヌは、イギリスの劇作家バーナード・ショーの原作を、鵜山 仁さんが演出したものです。
アヌイは法廷劇という形態で、ジャンヌが神の声を聴くところから始まり、火刑に処される直前でシーンを止め、シャルルの戴冠式を行う迄を描いています。
対するバーナード・ショーは、ボードリクールのロベールの元をジャンヌが訪れるシーンから始まります。
神の声を受けたジャンヌの、小さな奇跡のエピソードの始まりでもあります。
ロングの金髪のジャンヌは、可憐です。
この辺りは、笹本さんのイメージにとても合っていると思います。
やがて馬や男の服を調達したジャンヌがシャルルの元へ行き、変装したシャルルを瞬間的に見分けるエピソードは、「ひばり」と同様に描かれています。
シャルルを説得し、オルレアンを取り戻したジャンヌは、次第に周囲から孤立し始めます。
教会にも国家の力にも屈しないジャンヌが、恐れられ、妬まれ、疎まれたためです。
ここまでは、内容の差はあるものの「ひばり」と同様の展開ですが、ここから先の商況裁判の描写が大きく異なってきます。
「ひばり」では異端審問官から、強い異端者としての追求が行われます。
「ジャンヌ」では、英国の従軍神父ジョン・ド・ストガンバーの火刑を求める追求を、司教コーションや異端審問官ジョン・ルメートルがジャンヌを説得し保護する形に進めています。
その結果火刑は免れたものの、終身刑を言い渡されたジャンヌは服従を覆し、火刑に処されます。
ここからは、「ひばり」と同様です。
この後に「ひばり」ではラ・イールが駆け込んできて火刑を中止させ、シャルルの戴冠式を執り行い幕が降ります。
バーナード・ショーが描いたラストは清水邦夫の「楽屋」のように、死後数年経った後、ジャンヌや法廷での司教達が集い、ジャンヌの復権の様子を傍観者的に描いています。
「ひばり」を観た人間には、余計な演出にも見えます。
フランス人ではなく英国人の描いたジャンヌは、民意に逆らえなかった権力者達への皮肉と若い娘に跳ね返された英国のプライドを考えてのものだったのでしょうね。
ストーリー的には、このラストのシーンは正直言って私も不用に感じます。
今回のキャスティングは、笹本玲奈ちゃんもさることながら、周囲を固めるベテラン勢が
味のある渋い演技をしていて、とても良かったです。
法廷での悩み苦しむジャンヌの姿は、私としては松たか子さんの方がイメージに合っている気がします。
もう一度、観たいです。
ジャンヌ 世田谷パブリックシアター | |
ジャンヌ
ウォリック デュノア シャルルの小姓 ラドヴニュー(修道士マルタン) シャルル ジル・ド・レエ(青髭) デュノアの小姓/ド・クールセル プーランジェ ジョン・デスティヴェ(告発官) ジョン・ド・ストガンバー 賄方/イギリス兵 大司教 ラ・イール/フロックコートの紳士 ラ・トレムイユ/死刑執行人 ロベール/ジョン・ルメートル(審問官) コーション |
笹本玲奈 今井朋彦 伊礼彼方 大沢 健 浅野雅博 馬場 徹 石母田史朗 金子由之 今村俊一 酒向 芳 石田圭祐 新井康弘 小林勝也 中嶋しゅう 村井國夫 |