土曜日の日直の時に、81歳女性が突然の心窩部痛~背部痛(激痛)で受診した。疼痛が少し治まって、動ける様になってからの受診だった。心窩部の圧痛はあったが軽度だった。心電図は異常なし。
昨年11月にクリニックの紹介で当院で胃内視鏡検査を受けているが、異常なしだった(経過観察の胃底腺ポリープのみ)。このような症状は初めてだという。腹部エコーで胆嚢内に小結石があったが、胆嚢壁肥厚やdebrisはなかった。総胆管~肝内胆管の拡張はなかったが、胆嚢内の小結石が総胆管に落ち込んで嵌頓する可能性はある。(肝臓・膵臓・腎臓・脾臓・大動脈などは異常なし)
白血球数12000、CRP0.1と炎症の極初期の像を呈している。肝機能障害があり、AST211・ALT64・ALP375・γ-GTP140(総ビリルビンは1.1)。血清アミラーゼは81と正常域。腹部CTでみても異常を指摘できなかった。アセリオ1000mgを点滴静注したが、ある程度心窩部痛は続いていたのが気になる。
時間をおいて腹部エコーを再検したが、胆道系の拡張は出現してこない。症状の経過からは胆嚢結石が総胆管に流れて、いったん嵌頓しして(激痛発症)、その後うまく自然排石したと推定された。点滴と抗菌薬(胆道感染症に対して)で経過をみることにした。
翌血曜日はAST962・ALT628・ALP628・γ-GTP303(総ビリルビンは1.0)とさらに上昇したが、心窩部痛はすっかり治まっていた。今日はAST277・ALT417・ALP584・γ-GTP258(総ビリルビンは1.0)と下がってきた。症状はなく、食事摂取良好で特に影響もない。
腹部エコーで胆道系の拡張はなく、MRCPでも確認したが、総胆管結石はなかった。(総胆管内に漂っている可能性もなくはないか)
やはり結石がいったん詰まってから落ちたと考えざるを得ない。すっかり症状がなくなったので退院したいと言われたが、明後日血液検査を再検するので、それまでは入院してもらうことで了解してもらった。また小結石が総胆管に落ち込むと同様の症状になりますがと伝えたが、ラパ胆の手術を受ける気はないそうだ。