なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

頸椎偽痛風

2022年02月15日 | Weblog

 神経内科医から、回復期リハビリ病棟に入院している88歳女性のことで相談された。

 1月11日に脳出血で地域の基幹病院脳神経外科に入院していた。右前頭葉に出血があり、ちょっと珍しい部位だった。1左半身不全麻痺がある。1月26日に当院に転院していた。

 

 先週の2月10日から発熱が続いていた。胸腹部CTで肺炎像はなかった。尿混濁があるが、抗菌薬投与で尿所見が改善していた。発熱と炎症反応の上昇は変わらず、結果的には無症候性細菌尿だったことになる。

 抗菌薬をセフトリアキソンで開始したが、薬剤性肝障害があり、(治療に反応しないこともあり)チエナムに変更していた。今週になっても肝障害が変わらず、ファーストシンにしていたようだ。

 培養検査が出ていないので、評価しにくい。温度板をみるとずっと37℃台から38℃の発熱が続いていた。抗菌薬が効いていないというよりは、感染症ではないのかもしれない。

 食事摂取は良好だった。

 前医から指摘されていた腹部大動脈瘤があって、ちょっと気になった。しかし病室に診に行くと、患者さんは元気で菌血症があるようにはみえない。食事摂取も良好だった。

 発熱以外の症状を訊くと、左頸部を触ってここが痛いという。後頚部を触診・打診してもさほどの症状はなかった。頸部は右には回るが、左側に回すと(軽度に)痛いそうだ。前屈・後屈は少しできる。

 肺炎・尿路感染症・胆道感染症・蜂窩織炎はない。心内膜炎・感染性大動脈縁があるようでもないが、否定はできない。四肢の関節には疼痛や炎症所見はなかった。

 発熱+αのαは頸部痛になる。頸部CTで確認すると、頸椎の軸椎歯突起周囲に石灰化があった。症状もあることで、頸椎偽痛風が疑われた。カテーテル留置のない患者さんで、抗菌薬に反応しないのは結果的にかなり参考になる。

 抗菌薬投与前に血液培養2セットは提出しておいた。抗菌薬は中止してNSAIDs(セレコキシブ)で経過をみてもらうことにした。

 

 入院患者さんの発熱では血液培養(+尿培養±喀痰培養)がほしい。現在血液培養を出すのは当方と内科の若い先生、あと外科の先生が時々出すくらいだ。

 肺炎はないので、尿路感染症ならセフトリアキソンをちょっと入れれば、と思ったのだろう。

 

 

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