火曜日に山間の隣町の診療所から77歳男性が救急搬入された。自宅でひとり暮らしをしていた。夜に明かりがついていなかったことから、地域の民生委員とケアマネージャーが訪問した。
こたつに入ってぐったりしているところを発見した。発語もなく、動けなかった。診療所に運んだが、血圧が70と低く、酸素飽和度の測定不能だった(低体温というほどではない)。
診療所から当院に搬送の連絡が来て、引き受けた。どんな人が来るかと思っていたが、かなり痩せた方だった。血圧は100くらいと測定できた。酸素吸入をしてきたが、酸素飽和度が100%となっていた。その後酸素を中止できた。
当院搬入まで40分くらいかかっているが、救急車内の暖かさで回復したのだろう。話しかけると小声で返答した。
1か月くらいほとんど食べていないという話だが、正確にはわからない。当地に身寄りもなかった。東北の別の県に妹がいるというが、交流はないのだろう。
血液検査の結果有意な炎症反応の上昇はなかった。BUN・血清クレアチニンの上昇は腎前性腎不全と判断された。胸腹部CTで肺炎はなく、腹部も明らかな異常はなさそうだ。頭部CTでは著明な脳委縮を認めた。
地域の基幹病院では困惑するような、当院向きの患者さんだと思った。点滴をして経過をみて、後は福祉サービスにつなげることになると見込まれた。
問題が2つあった。ひとつは、血糖が255mg/dlと高く、空腹時血糖相当でこの値になり、糖尿病だ。ところが、HbA1cが測定不可能だった。異常ヘモグロビン血症が疑われる、と検査から報告があった。外注の血清グリコヘモグロビンを提出した。少量のインスリン注で対応することにした。
もうひとつは、水分はとって特にむせはないようだが、食事をとろうとしない。嚥下障害ではないので、拒食になる。認知症はあるのだろうが、これは困る。