昨夜の救急外来に15歳の中学3年女子が意識障害(消失)で救急搬入された。年艇はぎりぎり小児科の扱いになるが、2年前から小児科で診てはいた。3ケタの意識障害は戻らず、当直の外科医から小児科医に連絡がいって入院になった。入院してからは意識清明になり、表情もニコニコしていたそうだ。
一昨年に1回、昨年2回同様の意識障害で意識消失があり、今回が4回目になる。最初は学校から当院に病院見学に来た時だったが、その時はすぐに意識回復している。救急当番の外科医が対応して、起立性低血圧による失神を考えたようだ。その後の2回は中学校内で起きている。体育の時間と音楽の時間だった。どちらの救急搬入時も意識が戻っていなかった。けいれんはなかった。救急室で経過をみているうちに、30分以内には意識清明になって症状はすっかり消失する(傾眠も興奮もなく、頭痛などもない)。
小児科で脳波検査を2回行って異常はなかった。音楽の時間に倒れた時は、当方が救急当番で対応した。目はギュッと閉じていて、昏睡というのには違和感がある。画像検査はされていなかったので、頭部MRIを行ったが(一応もやもや病などの器質的疾患疑いで)異常はなかった。小児科医は心因性と判断している。
けいれん発作はないので、心因性非てんかん性けいれん(phychogenic non-epileptic seizure PNES)とはいえないとすれば、心因性失神ということになるのだろうか。PNESの一種ととるのか。
弟さんに脳性まひがあり、ご本人も高校受験があるが、どの程度関連するかはわからない(中1からあるし)。一泊入院で今日は退院になった。
今日から反応が悪くなってぐったりしていると、96歳女性の救急搬入依頼がきた。発熱はなく、血圧は100程度という。脳循環不全で点滴で経過をみればいいかと軽く考えていたが、違った。
体温27℃と重度の低体温だった。自宅で息子と二人暮らし。ふだんはベットから引きずって茶の間まで連れてきて、食事をさせていたそうだ。血圧は100前後だったが、常には降圧薬を3種類処方されているので、これは血圧低下だ。心拍数は30/分台の洞調律だった。呼びかけても揺すってもまったく反応がない。
温めた点滴を入れて、全身をシートで覆って温めた。しだいに顔がまだらに赤身がちょっと出て、両手をゆっくり動かすようになった。発語はないが、もともと一声出るかどうからしい。
頭部CTはラクナ梗塞が多発していたが、両上肢の動きから見ても新規の脳血管障害はないようだ。胸腹部CTでも明らかな異常を指摘できない。肝機能障害・腎機能障害・尿酸高値・凝固異常がある。
昨日まで食事はとっていたというが実態はわからない。看護師さんから、「ネグレクト?」と言われたが、放置していたわけではないようだ。それなりに介護はしている(たぶん)。暖房はストーブひとつなので、自宅内にいても環境としては厳しいのかもしれない。
入院してから、ゆっくりと直高温が上昇して、夕方には30℃まで上がった。周囲を見る様になった(ような気がする)。
一昨日95歳女性が高熱で救急搬入された。インフルエンザ迅速試験は陰性で、明らかな肺炎はなかった。総胆管結石があり、肝機能障害・黄疸を認めて、急性胆管炎と診断された。
9年前に総胆管結石で専門病院に紹介されて、内視鏡的乳頭切開と結石除去の処置を受けていた。2年前に当院の消化器科に入院した時に総胆管結石がまた出来ていた。抗菌薬投与で胆管炎は治癒して、改めての結石摘出はしない(できない?)として、経過観察になっていた。それから2年無事だったので、結果的に適切な判断だったことになる。
先月地域の基幹病院消化器内科に入院しているが、総胆管結石を担当している先生から、もう処置はしないと言われたそうだ。確かに内視鏡処置中に急変する可能性がある。幸いに抗菌薬投与で軽快している。
今回も抗菌薬投与と点滴で経過をみて、軽快すればラッキー、こじれて悪化した時は諦めるという方針で行かせてもらうことにした。翌日の検査で肝機能障害は変わらず、腎機能障害も進行していた。解熱してバイタルは問題なかったが、見た目にもぐったりして、乏尿にもなっていた。これはダメかなと思ったが、今日ははっきり覚醒して起き上がろうとする。何だか回復しそうな気もしてきた。
以前消化器病学会で「高齢者の総胆管結石」というシンポジウムがあったが、「超高齢者の総胆管結石」はたぶんしないと思う。
今日は救急搬入された2名の誤嚥性肺炎の患者さんが入院した。当院内科のありふれた風景ではある。救急外来担当は外科医で、最初は検査結果が出てから連絡が来たが、2名目(100歳の方)は検査を出しておいたから後はよろしくだった。はい、後は内科で何とかします。
1名は63歳男性で、年齢はさほどではないが、精神遅滞があった。先天性心疾患で手術を受けた痕があり、現在は精神科病院から抗てんかん薬や精神薬を処方されている。調子がいいと介助でちょっとだけ歩行できるそうだ。姉夫婦が介護していたが、体格が良すぎて、体位交換も大変だろう。
もう1名は100歳の男性で、年末に誤嚥性肺炎で入院して、厳しいかと思われたが何とか治った。嚥下訓練をして、地域包括ケア病棟で過ごしてから先月末に自宅退院していた。食事摂取を見ていると、どこに入っていくのだろうという人なので、予想された再入院ではある。今回は入院中に軽快再発を繰り返すのかもしれない。
昨日外科に腸閉塞で入院した80歳男性は、食道癌術後だった。2011年に胸腔鏡下食道切除・胃管形成(胸壁前経路)を受けている。その後、慢性糸球体腎炎で血液透析導入されていた。年数からみて食道癌自体は治癒しているのだろう。胃管が胸壁前経路で形成されていて、CT像は初めて見る画像だった。(内科なので、こんなところを通っている!、と驚いたというだけの話) 左3枚は受診時の画像で、右1枚は本日の軽快後の画像。
「高齢者のための漢方診療」の著者岩崎鋼先生からコメントがきてました。無名のブログで、まさか著者が見ると思わないので、好き勝手なことを書いていました。申し訳ありません。
昨日は日直の後に病院に泊まって待機していた。朝起きたら雪が積もっていて、まだ降り続いている。天気予報では昼ごろ止む見込み。
夜間特に内科の入院はなかった。テレビで高速道路が事故で通行止めというテロップが流れていたが、当院に救急搬入されていた。スリップして走行車線の左側のガードレールに衝突して、さらに中央分離帯に衝突していた。全身CTで明らかな骨折はなく、経過観察で外科入院になっていた。
他の内科の先生が担当している82歳男性は、肺炎の治療を継続していた。昨日の夕方に、「腹部が膨満して口腔内に胆汁様の消化液が上がってきている」、と病棟看護師さんから連絡があった。この患者さんは横行結腸癌があって、まだ内腔は保たれていたが、便が詰まれば腸閉塞になる。
とりあえずNGチューブを挿入した。挿入の時に嘔吐するかと思ったが、でくきるだけ吸引した後に、慎重にそおっと挿入したこともあり、幸いにも嘔吐はしなかった。黄土色の消化液が吸引されて糞便臭があった。大腸での閉塞と判断される。
朝に病棟の看護師さんか連絡があり、挿入時から朝までで、NGチューブから700mlの消化液が引けていて、その後も引けて来ているという。点滴の追加はしますかという。ふだんより尿量が減っていたので、吸引された分を追加で点滴することにした(本来はあらかじめ点滴追加を指示しておくべき)。
もともとADLが悪く、肺炎のコントロールがつかないので、手術はできない。放射線科の透視室に降ろしてイレウスチューブを挿入するのも厳しそうだ。明日ポータブルの胸部・腹部X線を入れた。
歴史家の磯田道史さんの本を読んでいる。ベストセラーになっているので、だいぶ遅れた読者だ。磯田さんは中学生のころから古文書を読んでいたそうだ。けっこうテレビにも出ているが、素人が興味を持ちそうなテーマを、面白く解説してくれる。岩田健太郎先生のブログで、磯田さんの本(日本史の内幕)を始めて読んだが、めちゃくちゃ面白い、と絶賛していた。
不明熱つながりで、野口善令先生の不明熱本(2冊出ている)を読むことにした。3月に江部先生の糖質制限のセミナーが東京であるので申し込んだ。日曜日の開催で、内科当番の都合をつけるのが難しいが、何とかしよう。
今日は日直で病院に出ている。インフルエンザの受診が多い。それほどの高熱でなくても、検査するとインフルエンザだったりしている。
入院は2名で、94歳男性のインフルエンザ(B型)+肺炎、89歳男性の腹痛・嘔吐だった。いずれも地域の基幹病院の近くの住所だが、満床に近くて受け入れが困難のため当院へ搬入された。後者は心房細動・心不全があり、胆嚢摘出術・内視鏡的総胆管結石摘出術を受けていた。癒着性腸閉塞、総胆管結石再発、上腸間膜動脈血栓塞栓症などを疑って検査したが、はっきりしなかった。
87歳女性が心肺停止で救急搬入されたが、心肺蘇生にまったく反応せず、死亡確認した。午前10時ごろに台所に倒れているのを家族が発見した。その前に確認したのは前日夜なので、いつ倒れたかは不明だった。AIで頭部CTに所見はなく、心臓死と判断された。
1週間前から食欲不振・不眠が続いているという24歳女性が受診した。昨日は内科クリニックを受診して、安定剤の処方を受けていた。「つらいことがあってから」と言うのみだった。家族や職場のことではなく、彼氏さんとの問題らしい。点滴を2本すると、もう帰宅するという。血液検査もしたが、異常はなかった。体型はぽっちゃりしている。精神科受診が好ましいというと頷いてはいた。
日本医事新報社のJmedで國松淳和先生編集のムックが出る。amazonで注文したが、これまで出された3冊を読み返して、到着を待つことにした。CareNeTVの「フィーバー國松」も見返しておこう。
45歳女性が大球性貧血で入院していた。頭痛・めまいを訴えて、先週の日曜日に救急外来を受診していた。Hb7.2g/dl(MCV122.9)と貧血を認めた。
この患者さんは子宮筋腫・過多月経からの鉄欠乏性貧血があった。婦人科では経過観察になったが、一昨年末から内科外来(大学病院からのバイトの先生の外来)で鉄剤が処方されて、約半年で貧血は改善して正常値になっていた。しかし、その後は受診していなかった。
翌月曜日に日曜の日直で診た先生が担当となって、巨赤芽球性貧血(+鉄欠乏性貧血)疑いで入院した。血清ビタミンB12と葉酸の外注検査が提出された。住所の問題でビタミンB12の注射に通院するのが大変ということだった。ビタミンB12の筋注と葉酸の内服が開始されていた。
外注検査の結果は、ビタミンB12と葉酸が低下していた。入院時に甲状腺機能低下もあって、こちらも補充療法が開始されていた。外注検査の結果抗TG抗体・抗TPO抗体が陽性で、橋本病だった。補充療法の結果を待つというところだったと思う。
たまたま金曜日に産婦人科でフォローの血液検査が入っていた。Hb5.7g/dlと下がっていた。担当医がその日不在なので、別の内科医に連絡がいって当方に相談された。その時点で、脳炎と貧血の2症例の対応が必要なので、分担してこちらを担当した。
検査室の血液担当の技師さんが、溶血ではと言っていたそうだ。昔当院に血液内科医がいるころに一緒に仕事をしていた技師さんだ。入院時にハプトグロビンが提出されていて、感度以下に低下していた。すぐに直接クームス試験を提出すると陽性だった。入院時に比べて、LDHは994から1966に、血清ビリルビン(主に間接ビリルビン)は3.4から5.3に、網状赤血球は22.7%から48.7%に上昇していた。
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)疑いとして、血液内科に紹介することにした。産婦人科で子宮粘膜下筋腫か子宮ポリープの疑いとして紹介していた病院には血液内科がある。2名の先生がいるらしい。電話で相談すると、診てもらえることになった。酸素も点滴もしていないが、救急搬送して下さいと言われたので、そうすることにした。
AIHAだとすると、自分で診たのはたぶん3例目。ビタミンB12と葉酸が低下していたのは、消費されたということだろうか。3連休前に引き受けてもらって助かった。
朝に内科の先生から、その日不在の先生が担当している2名の患者さんのことで相談された。ひとりは意識障害、もうひとりは貧血だった。
低血糖昏睡で救急搬入された82歳男性は、グルコース静注にわずかに反応したが、血糖正常域で経過をみても3桁の意識障害は続いていた。どのくらいの時間低血糖であったが不明で、遷延性低血糖(低血糖脳症)が疑われていた。
入院した時に、膵全摘出を受けているという話は聞いていた。糖尿病専門医の医院に通院していて、インスリンはライゾデク8単位だけだという。そのくらいで血糖コントロールできるのか不思議だった。HbA1cは8.8%。血中Cペプチドは感度以下の測定不能。
ところが入院後痙攣も出現した。頭部MRIで確認すると、拡散強調画像で脳表皮質に広範な高信号域を認めてという。ヘルペス脳炎が疑われる。37℃台の発熱があり、炎症反応は軽度だった。どうしましょうと言われたが、神経内科医が複数いる基幹病院(4~5名)に救急搬送することにした。幸い受け入れてもらえて、すぐに搬送した。
家族(娘さん)に連絡したが、この患者さんの妻の食事介助をしていて、すぐには来れないということだった。時間がないので、まず患者さんを搬送して、介護の目途がつきしだい直接そちらの病院に向かってもらうことになった。
両側肺に誤嚥性肺炎も併発していて、かなり状況は厳しい。何とか助かっても、寝たきり意識障害継続の状態で戻ってくるかもしれない。
そして別の貧血の患者さんも、さらに貧血が進行していると相談された。そちらは当方が対応することにした。(明日に続く)