そもそもセックス・ピストルズは好きというわけではなかった。他のニューウェイヴのミュージシャンに比べて汚過ぎた。のちに安全ピンや穴あきT、拘束服みたいなズボンがチープなコピーファッションとして大流行したのもイメージ良くなかった。
とは言え革新的だったのは確かで、のちにフロントマン=ジョン・ライドンが結成したP.I.Lはジョニー見たさにライブに行ったこともあります。つまり無視できない存在、カリスマだったわけです。
それでディズニー+で「セックス・ピストルズ」というタイトルのドラマを見つけた時、そんなに嬉しいというわけでもなかったけど、1970年代のロンドンの音楽シーンが出てくるかなとチラ見し始めました。
いきなりエリザベス女王の戴冠25周年シルバージュビリーが出てきて、続けて英国の支配階級と労働者階級の姿が交互に映し出され、格差社会という、今、まさに地球規模の問題をタイムワープして見せられたのでした!このドラマ只者じゃない!と思ってググったらダニー・ボイル監督だったのです。
正直、イギリスで労働者階級がノー・フューチャーで、って知識はあっても、昔は日本がまだバブっていたのでパンクの精神が理解できてませんでした。しかし今や50年前のイギリスの労働者階級の若者に共感できる。真面目に働いても貧乏とは。しかも50年前のイギリスは労働党の福祉政策でボロっちい見かけの公営住宅と言っても中に入ると日本のマンションなんかよりよっぽど広くて使い勝手も良い住宅もあったけどそれさえも21世紀の日本にはないんですよ・・・
はい、ボイルと言えば「トレインスポッティング」、世界一汚いトイレをワクワクするものとして見せてしまった監督ですので、ジョニー・ロットンもシド・ヴィシャスも本物より本物らしく仕立ててまして、ドラマ中でもペテン師ぽく描かれてますがあまりいいイメージなかったマネージャー=マルコム・マクラーレンもトーマス・ブロディ-サングスターが演じたおかげで冷酷で軽率なのに憎めない人物になっていました。
そもそもセックス・ピストルズが4人だというのもこのドラマではっきりと知ったくらい、ジョニーとシドしか知りませんでしたが、ギタリストのスティーヴ目線というのはその2人を公平に描くためか?と思ったら、ドラマの原作がスティーブの回顧録だったからでした。
しかしスティーブよりも、どうしても視線が行ってしまうのはジョニーで、俳優はアンソン・ブーン。「1917」に出ていたとのことですが、まったく記憶にない・・・が、本物以上に狂気の目をしたジョニーはとても印象的でカリスマオーラが出てました。役作りについて、姿勢やその細さを形にするのに苦労したそうですが、立ち姿がドラマ中とインタビューでは別人です。ドラマ中でのモヘアニットやスーツの着こなしもとてもカワイイです!
ドラマで知って意外だったのは、伝説のシドの恋人ナンシー、そしていい感じでずっと出てくるクリッシー・ハインドが2人ともアメリカ人だったこと。自国ではみ出し者だった若者が一旗あげようとロンドンに来ていたのはスパークスだけではなかったんだな。アメリカではNYですでにニュー・ヨーク・ドールズなどがパンクムーブメントを起こしていたけど、ロンドンにはディヴィッド・ボウイとかマイノリティのスターが早くから出ていたからでしょうか。
それから衣装担当のヴィヴィアン・ウエストウッドのこともチビチビとちゃんと描いていたのも良かった。のちに息子もデザイナーになったんですが、子供のうちからアートな環境でクリエイティヴィティを発揮してた様子もあったし。
こんなドラマまで見られるなんてディズニーの名前からは想像もできなかった拾い物でした。
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