「おとうさぁ~~~!!だっこしてぇ~~~!!」
突然子どもの鳴き声が耳元で響いた。
普段なら大きな物音でも目が覚めないが、そのほんの少し前が妙に静まり返ったんではないかと思う。
いきなり頭の中に文章が飛び込んできたという感じだった。
なんだなんだと思い時計を探したら、深夜3時の少し前だった。
子どもの声は少しずつ動いているように感じたから、マンションの前の道路を歩いて進んでいるのだろう。
「抱っこしてぇ~~~!!」
どうして?また、こんな夜中に子どもを起していなければならないだ!面倒なあ~~!
まあ、それなりの事情があったんだろうが・・・・
百歩譲ってそこは目をつぶり 「抱いてやれ!!」 と布団の中で叫んでいた。
段々遠くなる泣き声に、切ない理由をいくつもいくつも考えていた。
この間、無免許・飲酒運転で、奥さんと夫婦喧嘩の挙句事故を起こし、子どもを死なせた父親がいた。
まあ、人気のない道を親子で歩いている分には、事故には合わない。
それにしてもどうしてこんな時間に、大人というのは本当に身勝手で仕方のないものだ。
目がさえてしまったので丁度いいやと、サッカ―の決勝戦を観ることにした。
あれだけの騒ぎにも動じることなく寝ている旦那をちょっと誘ったが「いいや」というので、
テレビの前の特等席に枕と布団を持って陣取り「スペイン×イタリア」を観戦した。
「強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いんだ」
とイタリアは言っていた。 なんにでも当てはまるこの気持ちが、最後に生かせなかった。
故障者が次々と出て、3人の交代枠をそれのために使わなければならなかったことも、運が無かった。
最後はスペインに追いすがるかのような試合になってしまった。
スペインは、やっぱり強かった。
試合が終わり、ふと 「あの子は布団に入ったかな」 と思った。
幼稚園や保育園に行っている子でなければいいけれどなあ。ゆっくり休めているといいなあ。