趣の違う二作を続けて読んだ。
なあるほど「絹の変容」はホラーだ。ホラーってこういうものもあるんですね。
私きっと思い違いしています。ホラーってあのおどろおどろしいだけのものと思っていて、
書棚にあっても、映画が公開されても決して食指は伸びなかった。
でも待てよ、この本は面白かったけれど、ドラマになったり映画になったとしても
「うわあ、楽しみ!絶対観に行こう!!」とは私は思わないな・・・。
読み応えがあった。虫が苦手の向きにはあまりオススメはしない。
私も決して好きな方ではないから“怖いもの見たさ”の気持ちを駆り立てて、前進あるのみと頁を進めた。
その点「百年の恋」はホームコメディの色合いが濃い。
篠田節子の仕事仲間である青山智樹の育児日記に触発されて生み出された物語で、
作品中「真一くんの育児日記」が出てくるが、これは青山智樹が書いたもの。
なかなか説得力のある日記で、面白い。
篠田節子のあとがきに次のような記載がある。
「真一くんの育児日記」に前史を付けることになり、それを私が全面的に担当したことで、当初、意図したものとはだいぶテイストが変わってしまった。何しろSFモンスター物が得意(なつもり)なので、登場人物までもモンスターにしないでは気が済まなかった。」
モンスターね・・・確かに、主人公の大林梨香子はモンスターなのかもしれない。
でもどうだろう、女性だからモンスター扱いされるんだよなあと思った。
これが男性だったら、面倒見のいい奥さんがいればそれで問題解決だ。 うん、やっぱり性差だな。
だとしたら・・・多分、篠田節子はそのことを書きたかったのだろう。
でも、そこんところは女性が書いても男性に伝わらない。
やはり男性の書き手が“気がついて”書いてもらいたいテーマですね。
梨香子は、男性並みの能力を持ってバリバリのキャリアウーマンだが
“暮らし”に対する能力は一切ない。自分の意思で身につけなかったというのが正しいだろう。
そんな梨香子が、収入は今ひとつだが最低限のことは自分でできる夫との生活を描いたものだ。
視点は、色々と自分の世話をしてくれる主婦を手に入れるつもりだった夫のものだから、
奥さんのだらし無さに辟易とするところあたりから、俄然物語のテンポがリズミカルになる。
こんなはずではなかったと上司にぶちまけるあたりがターニングポイントとなり、
上司の女性編集者に長い長い女性の忍耐の歴史をこんこんと説教される場面で、
働く女性の代弁をしていると言えるだろう。
きっと仕事をもっともっとやりたいと望んでいる女性たちすべてがぶつかる問題なんだろうと感じた。
とにかく衝撃的で、笑えるし、テレビドラマにぴったりだなと思った。
そうしたら、ちゃんとNHKで制作していました。
バラエティな感じで、あっという間に読める面白い一冊でした。